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【最終章 本当の始動】

  • 新入社員向け

コラム :ある新入社員の成長記録


3月も終わりに近づき、三寒四温っていう言葉がまさにぴったりな毎日が続いている。

久々の同期会。
そして、新入社員として最後の同期会。

いつもはその場のノリでお店になだれ込む感じだけど、今回は事前に周知して、がっちり話せるように個室も借りた。

無事、同期12名全員参加!

近況報告やら、仕事のちょっとした自慢やら、罪のないくらいの愚痴やらでひとしきり盛り上がった後、

「今日の生温かい空気の感じ、入社式の日を思い出すよなぁ」

竹内が柄にもなく、しみじみした口調で思い出話を始めた。

「確かに…やたらなんか湿度が高かったよねぇ」

誰かの同意の言葉に、みんなそれぞれ社会人になった日のことを思い出しているようだった。
もちろん僕も。一年が速いのか遅いのかわかならい。
でも、これまでの人生にはない一年だったことは間違いない。

僕は、ちゃんと成長したのかな…?

「あの、みんな、ちょっといいかな」

まったりとし始めた頃、平井が静かに、でも意を決したように声を発した。
口数の少ない平井がこんな風に声を出すのは珍しい。
全員の視線が平井に集中する。

「あのさ、同期のみんなには先に言っておきたいことがあるんだよね」

「え?なに?」

何か重大な発表の前触れに、全員が静止して、平井の言葉に耳を傾ける。

え、なんだろ?
え、まさか、もう辞めるとか?
あ、確か彼氏が年上だったような…もしかして結婚?
いろんなことが頭を巡る。

「あのさ、私、来年の今頃は、もうこんな風に同期会には、参加はできないと思う」

え!
来年?
なんで?
辞めんの?

全員が口々に、驚きや疑問を口にした。

あ、あれかも…僕には、何となく察しがついた。
竹内と目が合った。
やっぱり、竹内も察しがついたらしい。

僕、竹内、平井の三人は、最初の仮配属先が同じだったこともあって、
何かと理由をつけては飲みに行くことが多かった。

最後に行ったのは、年末。
全員忙しい最中で22時を過ぎてからの集合になったけど、最後は竹内の家に移動して、結局は朝までの長丁場となった。

そこで、はじめて平井の夢を聴いた。

「イギリスで社会政策の勉強をして、子供の貧困問題を解決したい」

正直、僕にはピンとこなかった。
竹内にはもっとピンときていなかったはず…、
と言いたかったけど、意外にも竹内は神妙な顔で、日本の貧困問題について語り出した。

N大の野球部は定期的に社会貢献活動をしていて、子供たちに野球を教える機会があるらしい。

「明らかにさ、貧困世帯なんだろうなっていう子供もいるんだよなぁ」

「貧困世帯…日本なのに?」

僕の発言が、リアリティをもった二人にとってはあまりにも低レベルだったと、今となってはわかる。

この後、貧困問題を皮切りに日本の社会問題について、色々教えてもらった。

平井がもとより、竹内もけっこう詳しかった。
何より、二人とも自分なりの意見を持っていて、僕が知らないところで勉強したり、社会とつながっているみたいだった。

毎日ゆとりがなくて、自分のことしか考えていない自分が恥ずかしかった。
社会に出ただけで、僕は、本当にまだまだ無知で無力だ。

そんなことを思い出しながら平井に視線を戻すと、みんなにどう伝えようかと考えあぐねているようだった。

「まだ決まったわけじゃないけど、イギリスの大学院に進学したと思ってて…」

へぇ!
何で?
イギリス?

小さな声が、あちこちでこだまする。
平井はみんなの反応を見ながら、自分の夢について語り出した。

本当は4,5年この会社働いて、20代の後半で行こうと思っていたこと。
社会人として実力をちゃんとつけたいと思っていたこと。
でも日本の貧困問題、特に子供の貧困はどんどん深刻化していること。
社会政策の大家と言われる大学の教授が、あと数年で引退すると言われていること。
ある先輩に相談したら、反対されると思っていたのに、意外にも背中を押してくれたこと。

そんなことを淡々と、話した。

みんな、静かに聴いていた。
きっと、自分の中でいろんなことを考えながら、平井に心からエールを送りたいと思い始めていたと思う。

「あのさ…」

平井が一通り話し終えた頃、竹内が唐突に口を開いた。

「正直、俺は賛成では、ないよ」

え?
竹内?

「だってさ、採用されて1年もたたないうちに夢のために辞めますって、会社にとって損失がデカすぎんじゃん。
夢だからいいよって、言ってたら、会社が成り立たないよ。岩本は採用してるから、わかるだろ?」

確かに…
竹内の言わんとすることは、その通りだった。

「少なくともさ、採用してくれた会社に恩を返してから、辞めるべきじゃない?」

竹内の口調は、いつになく厳しく響いた。

「うん、その通りだと思う」

応える平井の口調も、神妙だった。

どっちの言い分も間違っていないし、気持ちもわかる。
何となく、みんながそれぞれの主張をし始めた。
一通りの議論が終わっても、当然、結論はでなかったし、それぞれが考えるべきことを持ち返る、そんな感じだった。

「岩本はどう思う?」

唐突に話が振られた。
福原だった。

以前は、福原が僕に話を振るときは、何て言うか、挑む感じだったけど、今日はニュアンスが違う。
何て言うんだろう…僕なら意味のあることを言ってくれるじゃないか、みたいな期待を感じて、嬉しくなった。

そしたら、急にむくむくと僕の中で平井に伝えたい思いが溢れてきた。
今、言わなきゃいけないって思った。

「あのさ、人事としては、竹内の言うことは本当にそうだし、
同期としても、もっともっと長く一緒に会社を盛り上げていきたいなってあるんだけど…

でも、あの、何て言うか、すごく感謝もしてるっていうか…
その、うまく言えないけど、子供の貧困ってさ、僕たちも絶対に無関係じゃないよね。
っていうか、無関係じゃいけないと思うんだよね。

でも、正直、僕は自分がそこを解決できるって思っていないし、そんな勇気もないんだよね…
だから、そんな中でさ、平井がそうやって社会のために考えてくれているのはありがたいと思うんだよね。
そういう人がいないと、社会って、ダメになると思うし、

僕ももしできることがあったら何かしたいって本気で思ってる…
あの、何にもできないかもしれないけどさ…」

再び、場は静かになった。
みんな、何かを噛みしめているようだった。

「んじゃ、活動開始したら、寄付はお願いすんね」

いつものドライな平井の声だった。
へ??

「だな、岩本は寄付要員、はい、決定!」

「ちょっと、なんでよ、待ってよ、それはみんなでしょう!?」

賑やかな笑い声が溢れた。

「てか、まだ辞めてないし!」

誰かのツッコミに、僕も思わず笑ってしまった。

何か、うまくはないけど、ちゃんと自分の気持ちを言えたと思う。
この同期、すごい、いいよな…

数日後、3月31日。

僕たち2016年入社の12名は、セミナールームに集められていた。
今から、本配属が言い渡される。
この会社の決まりで、本配属については本当に一切、知らされていない。

数日前まで、どこに本配属されるのか、僕は気が気じゃなかった。
でも、不思議と今はいい意味で本当にどこでもいいと思っている。

今朝、駅からの道のりで隣を歩いていた平井にそう言ったら

「それが、会社へのロイヤリティってやつなんじゃない?」

と一言。
そっか、さすがに、クールだな。

僕は、まだまだ無知で無力だと思う。

でも、一年前の僕とは違う。

大袈裟かもしれないけど、僕には居場所があって、仲間がいる。

それだけで、僕には大きな力があるんだと思う。

「岩本絢太郎」

「はい!」

僕は、社長の前に歩み出た。

本当の意味で、僕は、今、始動しようとしている。


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