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やった感で終わらせない!行動変化を促す体験型研修の具体例と設計方法
「研修の機会を与えているのに、なぜ変わらないのか…」
「研修では前向きだったのに、現場に戻ると元通りに…」
こうした悩みを抱える人事担当者は少なくありません。
「良い研修を実施しているはずなのに、行動が変わらない」
その背景には、多くの研修が「やった感」や「一時的な納得」で終わってしまっている現実があります。
特に、座学中心の研修では、知識が定着しても、いざ現場でどう活かすかがわからず、行動に結びつかないことがよくあります。
実は、人が行動を変えるには、“経験を通じた気づき”が不可欠です。
体験を通じて、自分の癖や思考に気づき、成功や失敗を実感することが、行動を変える原動力になります。
そこで本記事では、「体験型研修」がなぜ社員の行動変化を促すのか、その背景と具体的な設計のポイントを、事例を交えてわかりやすく解説します。
“やった”で終わらせず、“変わった”を生み出すために、体験型研修で後押しましょう。
目次
1)“行動”をゴールにするなら、体験型研修が不可欠
「やった感」ではなく、「行動が変わった」と実感できる研修を目指すなら、体験型研修が最適です。人は、頭で理解しただけでは動けないためです。
特に座学中心の研修では「分かったつもり」で終わってしまうことが少なくありません。
いざ現場に戻ると、学んだことをどのように活用すればいいのかわからず、行動が変わらない、ということがよくあります。
また、「どのタイミングで」「どのような場面で」「どう使えばよいのか」といった活用イメージが湧きづらく、知識はあっても実践へのハードルが高くなりがちです。
その点、体験型研修では、受講者が“やってみる”というプロセスを通じて、成功体験や気づきを得ることができます。
その体験が、自分自身の思考や行動を見直すきっかけとなり、現場での実践につながっていくのです。
たとえば、会議で発言しない癖を持つ社員に対して、会議ファシリテーションをロールプレイで体験させた結果、「自分が何に不安を感じていたのか」に気づき、その後の発言頻度が増えたという例があります。
知識の定着だけでなく、内発的な動機づけが生まれるのが、体験型研修の強みです。
だからこそ、単なる知識のインプットで終わらせず、体験を通じて気づきと行動を促すためには、「体験型研修」が不可欠です。
2)アーティエンスが実際に取り入れている体験型研修の具体例
体験型研修といっても、ただワークを盛り込めばよいわけではありません。
大切なのは、「何のために体験させるのか」、そして「どんな気づきや行動変化につなげたいのか」を明確にすることです。
ここでは、アーティエンスが実際に提供している体験型研修の中から、目的やテーマに応じて設計された4つの事例をご紹介します。
テーマ | 手法 |
---|---|
実践経験を重ね、スキル習得に繋げる | シミュレーションワーク |
ゲーム形式によって、難しい学びを身近な存在に変える | ビジネスゲーム |
対話を通して、価値観を広げる | ワールド・カフェ |
組織開発の手法を用いて、熱量あるアクションプランを作成する | OST(オープン・スペース・テクノロジー) |
2-1. 実践経験を重ね、スキル習得に繋げる(シミュレーションワーク)
実践的なスキルを定着させたい場合、“疑似体験”を繰り返せるシミュレーションワークを取り入れた体験型研修が効果的です。
「知っている」と、実際の場面で「できる」ことの間には、大きなギャップがあるためです。
たとえば、「ヒアリング」や「伝え方」などのコミュニケーションスキルは、知識として理解していても、実際の会話の中ではとっさに使えなかったり、自分の癖に引っ張られることが少なくありません。
そのため、“体験と振り返り”のサイクルを何度も繰り返しながら、行動を意識的に変えていくプロセスが重要になります。
アーティエンスの問題解決力研修では、「営業スキル向上のための企画を作成する」というミッションに取り組むシミュレーションワークを実施しています。
受講者は、上司役の講師に報連相を行いながら、より良い企画の作成に向けて取り組みます。グループで仮説を考え、上司役の講師に適切に伝え、講師の意見や考えを聞いて、さらに考えを深める中で、問題解決に必要なスキルを磨いていきます。
このプロセスを通じて、受講者は「状況に応じて自分がどう動くべきか」を自ら考え、実践で再現できるレベルまでスキルを定着させていきます。
シミュレーションワークは、実務に近い場面で繰り返し“やってみる”ことを通じて、行動変化の定着を後押しします。知識を“わかる”だけでなく“できる”に変えたい場合、こうした体験型の仕掛けが欠かせません。
2-2. ゲーム形式によって、難しい学びを身近な存在に変える(ビジネスゲーム)
難しい学びを身近な存在に変えるために、ゲームを体験しながらスキルや知識を身につける体験型研修もあります。
なぜゲーム形式が効果的なのかというと、座学では専門的になりすぎるテーマを「感情と行動を伴った体験」に変換できるためです。
たとえば、目標達成やコスト意識といったテーマは、新入社員にこそ理解してほしい内容ですが、実際にはなかなか伝わりにくいテーマでもあります。
新入社員は会社全体のお金の流れや利益構造、そして自身の行動が組織の成果にどう影響するかを実感する機会が少ないためです。
そのため、アーティエンスの目標達成・コスト意識研修では、仮想の会社をチームで運営するシミュレーションゲームを実施しています。
経営シミュレーションゲームを通じて、会社の利益構造や組織活動におけるコストについて学びます。受講者は、チームで仮想の企業を運営し、売上創出の難しさや目標達成の重要性を体感します。
例えば、限られたリソースの中でどのように利益を最大化するか、どのようにチームで目標を達成するかといった課題に取り組むことで、数値への感度や目標達成意識が高まります。
また、ゲーム中の意思決定や行動が、実際の業務にどのように影響を与えるかを振り返ることで、学びを深めます。
ゲーム形式の体験型研修は、抽象的なビジネススキルや数値感覚を具体的な行動に結びつける効果的な手法です。
2-3. 対話を通して、価値観を広げる(ワールド・カフェ)
価値観の違いや組織の多様性を受け入れ合うためには、問いを共有しながら対話を重ねるプロセスが有効です。
人は一方的に“教えられる”だけでは、自分の内側にある価値観や思考のクセに気づきにくいためです。とくに、チームワークや協働の重要性を学ぶ際には、お互いの背景や考え方の違いに耳を傾けることで、視野が広がり、関係性への理解も深まります。
そうした気づきを促す場づくりに適しているのが、ワールド・カフェ形式の体験型研修です。
ワールド・カフェとは、カフェのようにリラックスした雰囲気の中で、少人数のグループに分かれて自由な対話を行う手法です。参加者同士が対話を重ねながら、互いの考えに触れ、自分自身の思考も整理していきます。
アーティエンスの社会人の自覚研修では、このワールド・カフェ形式を取り入れた対話型ワークを実施しています。
「学生と社会人の違いとは?」「自分にとって“社会人として幸せである”とはどういうことか」といった問いを起点に、参加者はグループで意見を交わします。
他者の視点に触れながら、自分自身の価値観を言葉にしていくことで、「どうすれば、自分も幸せを感じながら会社や社会に貢献できるのか」といった意識が芽生えていきます。
対話を通じて気づきや価値観の広がりを得られるワールド・カフェ形式の研修は、スキル習得だけでは届かない、内面の意識や行動の“あり方”に働きかける貴重な機会になります。
2-4. 組織開発の手法を用いて、熱量あるアクションプランを作成する(OST)
受講者が“自分たちで考え、決めて、動く”感覚を持てるようにするには、組織開発の手法である「OST(オープン・スペース・テクノロジー)」を活用した体験型研修が効果的です。
OSTは、参加者自身が話したいテーマを提案し、それに興味を持った人たちが集まって自発的に対話・議論を深める形式のワークです。自由度が高く、参加者が「自分で選んだテーマ」「自分で決めた行動」に取り組むため、対話の中で本音が引き出され、実行可能なアイデアへとつながりやすくなります。
アーティエンスの2年目フォロー研修では、OST形式のワークショップを取り入れています。
『自らのありたい姿と、会社への貢献につながるため』に関して受講生が今話したいテーマを出し、似たテーマに関心を持つメンバー同士でグループを組み、対話を通じて具体的なアクションプランを作成します。
このプロセスでは、他者の多様な視点や講師からのアドバイスを取り入れながら、自分一人ではたどり着けなかった視野の広がりや気づきを得ることができます。
また、対話を重ねるなかで、「これを実行すればチームや自分が良くなりそう」という前向きな感覚が生まれ、行動への意欲も高まっていきます。
このプロセスを通じて、参加者は自らの考えを深め、他者の視点を取り入れながら、実行可能なアクションプランを策定します。
OSTを用いた体験型研修は、参加者の主体性を引き出し、現場に根付く実行力のあるアクションプランを生み出すのに適しています。単なる学びにとどまらず、「組織を自分たちの手で変えていく」きっかけを作る強力な手法です。
ここまで紹介してきたように、体験型研修にはさまざまな形式があります。
シミュレーション、ゲーム、対話、組織開発手法など、その手法は異なっても、共通しているのは受講者が自ら気づき、行動を変えていくプロセスを重視している点です。
知識をただ伝えるのではなく、受講者の中にある課題意識や価値観に働きかけることで、行動やマインドに持続的な変化を促すことができます。
「やった感」で終わらせず、「現場が変わった」と実感できる研修をつくるために、こうした体験型のアプローチは大きな力を発揮します。

3)社員の行動変化を促す体験型研修の設計ポイント
体験型研修で“本当に人が変わる”瞬間を生み出すには、単に当日のワークを工夫するだけでは不十分です。研修の前後も含めた「設計全体」が、行動を変えるカギとなります。
社員の主体性を引き出すために欠かせない「研修前・中・後」の設計ポイントを紹介します。
フェーズ | 設計ポイント |
---|---|
【研修前】 事前準備で行動変化を加速させる | ・目的の明確化 ・事前課題の設定 ・上司との連携 |
【研修中】 気づきと行動をつなぐ | ・体験と内省のバランス ・フィードバックの活用 ・現場との接続 |
【研修後】 行動を定着させる | ・バトンメール®の活用 ・上司との面談 |
3-1. 【研修前】事前準備で行動変化を加速させる
体験型研修の効果を最大限に引き出すには、「研修前」の準備が大切です。
目的があいまいなまま参加した研修は、「何のために受けているのか分からない」という状態を生み、行動変化にはつながらないためです。
だからこそ、参加者が自分ごととして捉えられるよう、事前の働きかけが重要になります。
そのためのポイントは、次の3つです。
・目的の明確化
・事前課題の設定
・上司との連携
目的の明確化
研修の目的を事前に明確に伝えることで、受講者は「なぜ参加するのか」「何を得るべきか」を理解し、自分ごととして研修に臨めます。
目的があいまいなままだと、「とりあえず受ける」という姿勢になり、研修中の気づきや学びにも深まりが生まれません。参加意義を本人が理解できていれば、研修の時間が“自分のための時間”として切り替わります。
アーティエンスでは、研修の冒頭だけでなく、案内段階から「今回の研修で身につけてほしいこと」や「現場でどう活かしてほしいか」といった意図を人事の方から受講生に伝えてもらうように働きかけています。
これにより、受講者自身が「自分に必要な研修だ」と納得した状態で参加でき、学びへの意欲も高まります。
事前課題の設定
研修前に課題を出すことで、受講者が“準備が整った状態”で研修に臨めるようになります。自分の現状や課題について考えたうえで参加することで、「この機会で何を学びたいか」「どう変わりたいか」といった意識が自然と芽生えるためです。
フォロー研修の事前課題として「この1年間の成長の振り返り」や「自分が周囲に与えている影響について、他者からインタビューする」などを取り入れることがあります。こうした準備があることで、当日の対話やワークに深みが生まれ、研修を“自分にとっての時間”として活用しやすくなります。
事前課題は、参加者の意識を内側に向けさせ、学びの土台を整える大切な仕掛けです。
上司との連携
受講者の上司と連携しておくことで、研修内容が職場で活かされる確率が高まり、行動を変える後押しになります。
上司が研修の目的や内容を把握していないと、研修後にフォローができず、現場での実践がうまく進まないことがあります。反対に、上司が関心を持って関わることで、受講者は「見てもらえている」「期待されている」と感じ、モチベーションが高まります。
アーティエンスでは、人事の方を通じて、上司にも研修の概要や目的を事前に共有してもらうようにしています。必要であれば、上司との事前面談を推奨することもあります。
研修効果を“一過性の気づき”で終わらせないためにも、現場を巻き込んだ連携が重要です。
体験型研修の成否は、当日の設計だけでなく「研修前」の準備で大きく変わります。
この3つの仕掛けがあるだけで、参加者の“受け身の姿勢”が“自分ごと”に変わり、研修での気づきや学びが格段に深まります。
「この時間は自分の成長のためなんだ」と本人が納得した状態で臨むことで、内発的な学びが始まり、研修後の行動にもつながりやすくなります。
3-2. 【研修中】気づきと行動をつなぐ
研修中の設計次第で、受講者の「気づきの深さ」と「行動変化へのつながり」は大きく変わります。どれだけ良いプログラムを用意しても、ただ体験させるだけでは学びが表面的になり、日常の行動に結びつきにくくなるためです。
だからこそ、「体験→内省→実践イメージ」までを丁寧につなげていくことが大切です。
そのために押さえておきたいのが、以下の3つの工夫です。
・体験と内省のバランス
・フィードバックの活用
・現場との接続
体験と内省のバランス
体験型研修では、ワークの実施だけでなく、その後の「振り返り」までをセットで設計することが重要です。
体験だけではただのイベントで終わってしまい、気づきが本人の中に定着しないためです。
たとえば、会議での発言練習や上司への報連相のロールプレイを行ったあと、自分の行動や感情を振り返る時間を設けると、「なぜ発言をためらったのか」「どうすればもっと伝わったのか」といった自覚が生まれます。
アーティエンスでは、ワーク後に個人ワークやグループ対話を通じて“内省の時間”を組み込み、体験から学びを抽出する設計をしています。
こうした「体験と内省の往復」があることで、行動を変えるための自覚と納得が生まれます。
フィードバックの活用
自分では気づけない癖や思考パターンに気づくために、他者からのフィードバックはとても有効です。
第三者の視点から見た反応を受け取ることで、学びの幅が広がり、より具体的な改善点にも気づけるようになります。
アーティエンスの研修では、講師からの丁寧なフィードバックだけでなく、ペアやグループメンバー同士でのフィードバックのやり取りも重視しています。「今の言い方は分かりやすかった」「もっとこう言えば伝わったかも」といった言葉のやり取りが、次のチャレンジにつながっていきます。
フィードバックを通じて、単なる“体験”が“学習”へと転化していきます。
現場との接続
「学んだことをどう現場で使うのか」が明確になっているほど、研修後の行動に移しやすくなります。
そのため、研修中に「どんな場面で使えそうか」「自分の仕事にどう活かせそうか」を具体的に考える時間を取ることが大切です。
たとえば、ロールプレイで報連相を体験したあと、「自分のチームで使うならどんなタイミングか?」「伝え方をどう工夫できるか?」などをグループで話し合うことで、実践に向けた準備が整っていきます。
アーティエンスの研修では、ワーク後に「職場での具体的な活用場面」を書き出したり、チーム内でシェアしたりすることで、“現場への橋渡し”を意識的に行っています。
体験を通じて自分を見つめ直す時間、他者との関わりの中で得られる学び、そして現場での活用をイメージできる仕掛けの3つが揃うことで、「ただやって終わり」の研修ではなく、「行動が変わる研修」へと進化していきます。
3-3. 【研修後】行動を定着させる
体験型研修の効果を“その場限り”にしないためには、研修後のフォローが欠かせません。
せっかく研修中に得た気づきも、日々の業務に埋もれてしまえば、行動にはつながらないためです。
だからこそ、研修後の「定着と実践」を支える工夫が必要になります。
ここでは、行動定着を促す2つのポイントを紹介します。
・バトンメール®の活用
・上司との面談
バトンメール®の活用
研修の効果を持続させるためには、受講者同士の継続的な関わりがポイントです。
アーティエンスが開発した「バトンメール®」は、受講者が学びを実践し続けるための仕組みとして、多くの企業にご活用いただいています。
この仕組みでは、4〜5名でグループをつくり、1人ずつ週替わりで「研修の学びをどう現場で活かしてみたか」をメールやチャットで共有し、次のメンバーに“バトン”をつないでいきます。
このプロセスによって、定期的なアウトプットの機会が自然と生まれ、学びの実践と振り返りが習慣化されます。
さらに、仲間の実践を見ることで「自分も頑張ろう」と刺激を受けたり、自分の行動に対しての共感や応援をもらえたりすることで、前向きな気持ちが継続しやすくなります。
バトンメール®は、「学び → 実践 → 共有 →振り返り → 次の行動」という好循環を生む、シンプルかつ効果的な継続支援の仕組みです。
上司との面談
研修の学びを職場に定着させるためには、受講者の上司との連携が不可欠です。
研修内容や受講者の気づきを上司が理解し、適切にサポートできる状態が整っていることで、日々の現場での実践が後押しされます。
アーティエンスの研修では、研修終了時に受講者に書いてもらう「振り返りシート」を活用してもらっています。
この振り返りシートの設問に以下の内容があります。
④本日の学びを行動に移す上で、感じる難しさや、阻害要因として思い浮かぶことはありますか?また、阻害要因を乗り越えるために、意識・行動していきたいことはありますか。上司・先輩や会社に、支援・助けてほしいことはありますか?
この内容を上司と共有したうえで面談を行えば、受講者本人も話しやすく、上司もどこに支援が必要かを具体的に把握しやすくなります。
仮に面談が難しい場合でも、内容を共有しておくだけで、上司のサポートの質が大きく変わります。
研修と現場をつなぐ“橋渡し役”として、上司を巻き込んでおくことが、行動定着を確実なものにする鍵となります。
“行動変化”をゴールに掲げる体験型研修では、研修後の設計まで含めて、ひとつの学びのプロセスです。
アーティエンスでは、受講者の変化を“本物”にするための伴走支援まで含めて、研修を設計・実施しています。
4)注意点|体験型研修が「効果が出なかった」ケースに共通する落とし穴
どれほど設計を工夫した体験型研修であっても、「効果が感じられなかった」という声が出てしまうケースは少なくありません。
実はそうした場合、多くに共通する“落とし穴”があります。
ここでは、体験型研修が効果を発揮しなかったケースに共通する3つの要因を取り上げ、何が足りなかったのか・どうすれば避けられるのかを具体的に解説します。
4-1. 目的が曖昧で「楽しかった」で終わってしまう
研修の目的が不明確では、体験は印象に残っても実際の行動には結びつきにくくなります。
体験型研修は感情や身体を使うため、「楽しかった」「盛り上がった」といったポジティブな感想を得やすい傾向があります。しかし、目的やゴールが曖昧なままだと、その体験は単なる“良い思い出”で終わってしまい、現場での実践には結びつきません。
よくあるのは、「他部署の人と話せて新鮮だった」「ワークが楽しかった」といった声が多く挙がる一方で、実際の行動に変化が見られないというケースです。
だからこそ、「なぜこの研修を行うのか」「何を得てどう活かすのか」といった意図を、事前に明確に伝えておくことが不可欠です。それによって、参加者は研修を“自分ごと”として捉え、行動につながる学びへと意識が向いていきます。
4-2. 現場の上司が研修内容を知らず、職場での行動を促せない
上司の理解と関与がなければ、研修の効果は現場で定着しません。
受講者が研修で新しい行動を始めようとしても、上司が研修内容を把握していなければ、必要な支援や声かけができず、変化は一過性のものになります。逆に、上司が研修に関心を持っていると、職場での実践もスムーズに進みやすくなります。
特に新入社員から若手社員のうちは、まだ自ら行動を変える力や判断力が十分でない場合も多く、上司のサポートが行動定着のカギを握ります。
たとえば、「あの研修で学んだこと、実践できそうな場面があるよ」「今回のやり方、前よりも良くなってるね」といった何気ない声かけが、本人の自信や意欲につながります。
また、上司が研修の目的や内容を把握していることで、日々のマネジメントや1on1の中で研修内容に沿った支援ができるようになります。受講者にとっては、「見守ってもらえている」「期待されている」と感じられ、学んだことを職場で活かそうとする姿勢が自然と育まれます。
このように、上司の理解と関与があるかどうかで、研修の効果が“一時的な学び”にとどまるか、“現場で活きる行動”に変わるかが大きく変わります。だからこそ、研修設計の段階から、上司との連携を意識的に組み込むことが不可欠です。
4-3. フォローアップがなく、日常業務に埋もれてしまう
研修後のフォローがなければ、日々の業務に流され、せっかくの学びは埋もれてしまいます。
人はどれほど研修で納得感のある学びを得ても、忙しい日常に戻ると、新しい行動を後回しにしがちです。意識して振り返る機会がなければ、研修中の気づきも徐々に薄れ、やがて忘れられてしまいます。
実際に、ある企業では研修中に前向きな気づきが多く生まれていたものの、その後の実践を促す仕掛けがなかったため、後日アンケートでは「職場で実践できなかった」との声が多数挙がったとのことでした。これは、学びを持続させる仕組みがなかったことが原因の一つです。
だからこそ、バトンメール®や上司との面談を通して「行動を振り返る場」や「他者と学びを共有する仕掛け」を意図的に設けることが大切です。
これにより、研修での学びを“やりっぱなし”にせず、実際の行動へとつなげ、定着させる流れをつくることができます。
体験型研修の成否は、研修当日の盛り上がりや楽しさでは測れません。
一見すると小さな工夫でも、これらのポイントを押さえることで、研修は“記憶に残る体験”から“行動を変える学び”へと進化します。
効果的な体験型研修にしたいなら、「楽しかった」で終わらせない設計を意識することが不可欠です。
5)体験型研修の成功事例|OSTによる対話型ワークで組織変革を実現
アーティエンスが実際にご支援した企業における、体験型研修による行動・成果の変化事例をご紹介します。
課題 : パワハラ・セクハラによる職場環境の悪化
ある部品メーカーでは、工場内でパワハラ・セクハラが慢性的に発生していました。特に工場長のふるまいに偏りがあり、気に入った社員には優遇、そうでない社員には高圧的な対応をしていました。
さらに、現場の知見が工場長に集中し、ナレッジがブラックボックス化。
本社の役員陣は現場の実態に気づかず、改善が後手に回る状態が続いていました。外部の社労士による研修なども行われましたが、行動変化にはつながらず、組織内の不信感と沈黙が根深く残っていました。
対策:オープンスペーステクノロジー(OST)を使ったワークショップ実施
そこで導入されたのが、体験型の対話手法「OST(オープン・スペース・テクノロジー)」を用いたワークショップです。
参加メンバーは、経営陣・工場長・課長・若手社員・契約社員など、階層を越えた全メンバー。参加者一人ひとりが「今、話し合いたいテーマ」を持ち寄り、自らグループをつくり対話する形式を取りました。
この“自分たちで考え、決めて、話す”という体験を通じて、社員同士が初めて対等に語り合い、本音を交わせる場が生まれました。
最初は強く抵抗していた工場長も、他者の言葉に耳を傾けるうちに変化し、自ら施策のデザインチームに加わることを決意。「対話の場」が、人と組織を動かしました。
効果:パワハラ・セクハラの撲滅とエンゲージメント向上による職場環境の改善
ワークショップ以降、工場内でのパワハラ・セクハラは驚くほど速やかに撲滅されました。社員同士の信頼関係が回復し、エンゲージメントも向上。職場に漂っていた諦めや萎縮の空気が一掃され、前向きな風土が広がっていきました。
特筆すべきは、あれほど抵抗していた工場長自身が翌年には本社へ栄転し、組織のナレッジ共有やエンゲージメント向上に取り組む存在へと成長したことです。
ルールの徹底や注意喚起では変わらなかった現場が、“自分たちで語り、決めた”という体験型の対話の場によって変わりました。
座学では得られなかった“気づき”“感情”“自発性”が、シミュレーション・対話・ゲーム・OSTといった体験型の手法を通じて引き出され、それが社員の行動の変化へとつながっていきます。

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6)まとめ・アーティエンスの体験型研修のご案内
「やった感」ではなく、「行動が変わった」と言える研修を実現するには、受講者自身が“気づき、考え、試す”プロセスを通じて、内側から変わる体験が欠かせません。
本記事では、アーティエンスが実践している体験型研修の具体例をもとに、行動変化を促す設計のポイントや、研修効果を高めるために必要な工夫を詳しくご紹介してきました。
体験型研修は、社員の主体性を引き出し、職場での行動につながる“実感ある学び”を提供できます。
その力を最大限に活かすためには、「目的の明確化」「現場との接続」「継続的なフォロー」など、設計全体を工夫しましょう。
アーティエンスでは、こうした設計思想に基づき、「社員の行動が実際に変わる」体験型研修を数多くご提供しています。
たとえば、
・シミュレーションや対話を通じて自ら考える力を育む研修
・現場の行動変化に直結するフォロー体制
・管理職・若手・新入社員など階層ごとの課題に応じたプログラム設計
など、組織ごとの課題にあわせたオーダーメイド型の研修設計も可能です。
「自社に合った体験型研修を相談したい」「行動変化につながる研修を一緒に考えたい」
そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。
一人ひとりが「やってみよう」と思える小さな体験の積み重ねが、やがて大きな行動の変化へとつながります。
“やった”で終わらせず、“変わった”を生み出すために、体験型研修の力で、社員の行動変化を後押ししていきましょう。00
どの体験型研修が自社に合っているか迷ったときは、どうぞお気軽にご相談ください。課題や目的に合わせて、最適な研修プランをご提案いたします。