- [ コラム ]
もう迷わない!管理職研修は4種類!おすすめ研修内容一覧表付き
- 「管理職研修には、どんな種類があるのだろう?」と思い、本コラムにたどり着いたのではないでしょうか。結論からお伝えすると、管理職研修は大きく下記の4種類に分けられます。1.新任管理職研修2.次世代リーダー育成(上級管理職)研修3.パフォ
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【成功事例あり】管理職の“横の連携不足”が組織に与える弊害と解決法
更新日:
「他部門の管理職ともっとスムーズに連携してほしい…」
「管理職同士が協力し合わないために、プロジェクトがうまく進まない…」
「部署同士で、嫌味を言い合っている…」
このような悩みを抱えていませんか?
管理職の横の連携が不足すると、組織全体にさまざまな悪影響が生じます。
【管理職の横の連携がないことによる弊害】
問題 | 具体的な影響 |
---|---|
生産性の低下 | 部門ごとの連携不足により、業務の効率が悪化し、プロジェクトの進行が遅れる。 |
業務の属人化 | 情報やノウハウが個人に依存し、担当者が不在になると業務が停滞する。 |
情報共有の停滞 | 必要な情報が適切に伝わらず、誤解や判断ミスが増加する。 |
意思決定の遅れ | 他部門の状況が見えないため、迅速な意思決定ができず、経営判断が後手に回る。 |
部門間の対立・責任の押し付け合い | 連携不足により、問題が発生した際に責任のなすりつけ合いが起こる。 |
無駄な業務の増加 | 部門ごとに類似業務が重複し、コストと労力の無駄が発生する。 |
現場の混乱・士気の低下 | 部門ごとの方針が食い違い、現場が混乱。社員のモチベーション低下や離職につながる。 |
成長の機会損失 | 他部門の成功事例やノウハウが共有されず、組織全体の成長スピードが鈍化する。 |
こうした問題を解決するには、管理職の横の連携を阻む要因を明確にし、適切な対策を講じることが重要です。
本記事では、管理職の横の連携を阻む要因を整理し、それを解消するための具体的な施策を短期・中長期の両面から解説します。
自社でできることから始めて管理職の横の連携を強化し、組織力を向上させましょう。

大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。
目次
1)管理職の横の連携を阻む要因とは?
管理職同士の横の連携がうまくいかない背景には、以下のような要因があります。
1. 評価制度の弊害:部門間の協力が評価されない
2. 情報共有の壁:必要な情報が適切に届かない
3. 心理的要因(対立・不信感):他部門への誤解や固定観念がある
4. 縦のつながりが優先される:経営層が横の連携を重視していない
5. 物理的な距離・接点不足:関係構築の機会がない
6. 部署ごとの力関係の固定化:特定の部門が優位に立ち、連携が阻害される
具体的にどのような課題が連携を阻んでいるのかを解説します。
1-1. 評価制度の弊害:部門間の協力が評価されない
組織の評価制度が「部門単位の成果」を重視しすぎると、管理職は自部門の成果ばかりに意識が向き、他部門との協力が後回しになります。
例えば、営業部は売上、製造部は生産効率、マーケティング部はリード獲得といった個別のKPIを持っていると、各部門の管理職は「自部門の目標を達成すること」が最優先になってしまいます。その結果、「他部門との連携を深めること」にインセンティブがなくなり、連携を取る必要性を感じにくくなるのです。
この状態が続くと、たとえば営業部が無理な納期を約束しても製造部が対応できず、納期遅れやクレームにつながるといった問題が発生します。にもかかわらず、営業部と製造部それぞれの管理職は「自分たちのKPIには関係ない」と考えてしまい、本来必要な「部門間の協力」が実現しにくくなります。
1-2. 情報共有の壁:必要な情報が適切に届かない
管理職同士がうまく連携できない大きな原因のひとつに、必要な情報が適切に共有されていないことがあります。部門が異なれば、当然ながら使うツールやデータの種類、意思決定の基準が違います。その結果、「どこにどんな情報があるのか分からない」「報告が必要な情報が共有されていない」などの問題が発生し、連携しづらくなります。
特に、営業・製造・マーケティングといった部門間では、業務の専門性が異なるため、相手の業務を理解しづらいという課題もあります。
例えば、営業部が「新商品が売りにくい」と感じていても、開発部はそのフィードバックを受け取る機会がなく、結果として「現場のニーズとズレた商品」が生まれることがあります。
このような情報の断絶が続くと、「あの部門は何をやっているか分からない」「こっちの苦労を理解してくれない」といった不信感につながり、ますます管理職間の連携が難しくなります。
1-3. 心理的要因(対立・不信感):他部門への誤解や固定観念がある
組織の中で、「あの部門はこういう考え方だから仕方ない」といった固定観念が生まれやすく、それが管理職間の対立や不信感につながることがあります。
例えば、営業部は「製造は融通が利かない」、製造部は「営業は無理ばかり言う」、マーケティング部は「現場を理解していない」といった見方をしがちです。
このような固定観念があると、本来は協力できる場面でも「話してもムダだろう」といった思い込みが先行し、意見交換が少なくなります。また、過去に起こった小さな対立が積み重なり、「あの部門とはうまくやれない」という意識が管理職の間に根付いてしまうこともあります。
特に、経営層がこのような状況を放置すると、部門間の壁はますます強固になります。結果として、必要な意思決定が遅れたり、企業全体のパフォーマンスが低下する原因にもなります。
1-4. 経営層が横の連携を重視していない:縦のつながりが優先される
多くの企業では、経営層や上層部が「縦のつながり」を重視し、部門間の横の連携に関心を持たないケースがあります。
経営層が管理職に対して「部門の成果を最優先しろ」と指示を出している場合、管理職は「自部門の成績を上げること」に集中し、他部門との協力に消極的になってしまいます。
また、経営層が部門間の連携を評価しない場合、管理職も「横の関係を強化しても意味がない」と考えるようになり、協力の文化が根付きません。
例えば、経営会議で「営業部と製造部の連携がうまくいったおかげで納期短縮できた」といった事例が共有されないと、他の管理職は「連携してもうちの評価には影響しない」と感じてしまいます。
こうした状況を防ぐには、経営層が積極的に「部門横断のプロジェクトを評価する」「管理職間の連携を意識的に促す」といったアクションを取ることが重要です。
1-5. 物理的な距離・接点不足:関係構築の機会がない
部門間の物理的な距離が遠い場合、管理職同士が普段から接点を持つ機会が少なくなり、結果として「他部門の管理職と話すきっかけがない」状態になります。
例えば、製造部が工場、営業部が本社に分かれている場合、業務のやり取りはメールやチャットだけになりがちです。
また、たとえ同じ拠点にいても、業務時間中はそれぞれの業務に忙しく、「意図的に関係を築く場」を作らない限り、部門間の交流が生まれにくいのが実情です。
このような状況では、管理職同士が自然と関係を深める機会がないため、問題が発生したときにも「相談しよう」という意識が生まれにくくなります。
1-6. 部署ごとの力関係の固定化:特定の部門が優位に立ち、連携が阻害される
企業によっては、営業やマーケティングなどの部門が「花形」とされ、バックオフィスや製造部門が補助的な役割と見なされることがあります。このような文化が長年にわたって形成されると、特定の部門の発言力が強くなり、他部門の意見が軽視される傾向が生まれます。
例えば、経営層と距離が近いマーケティング部門が意思決定に強い影響を持ち、他部門の意見が十分に反映されない場合、連携のバランスが崩れやすくなります。
また、営業部が「売上を作る部門」として優遇される一方で、製造部門の要望が後回しにされるといったケースも見られます。
このような状況が続くと、部門間の関係は対等ではなくなり、本来であれば協力すべき場面でも「自部門の利益を優先する」意識が働き、円滑なコミュニケーションが難しくなります。
これらの課題を解決するためには、具体的な施策が必要です。次の章では、「管理職の横の連携を強化するための具体的なアクション」を紹介します。
2)管理職の横の連携を強化する具体的な施策
管理職の横の連携を強化する具体的な施策をすぐに実施できる短期施策と、組織に定着させるための中長期施策を、管理職の連携を阻む要因ごとに提案します。
短期施策 | 中長期施策 | |
---|---|---|
評価制度の弊害を解消するための施策 | 「部門間協力を評価する仕組み」をテスト導入 | ・MBO(目標管理制度)に「横の連携」項目を加え、評価基準に組み込む ・成果指標を「個別KPI」から「組織KPI(部門横断的な成果)」へシフト |
情報共有の壁を解消するための施策 | 部門間での「クロスブリーフィング」を実施 | ・部門ごとのデータをまとめて可視化 ・部門間の情報共有ガイドラインを作成 |
心理的要因(対立・不信感)を解消するための施策 | 「管理職ピアコーチング」を導入し、部門横断で1on1を実施 | ・心理的安全性を高める研修を実施し対立を生産的な議論に変える ・部門間連携の成功事例を社内で積極的に共有し、良い連携を文化として定着させる |
経営層が横の連携を重視していないことへの施策 | 経営会議の議題に「部門間連携の成果報告」を追加する | ・「部門横断タスクフォース」を設置し、経営層が関与するプロジェクトを増やす ・経営層の評価制度にも「横の連携の促進度」を組み込み、トップダウンで推進する |
物理的な距離・接点不足を解消するための施策 | 月1回、部門横断でランチ会を実施する | ・オフィスレイアウトを見直し、物理的な距離を縮める ・合同研修・ワークショップを実施し、部門を超えたつながりを強化する |
部署ごとの力関係の固定化を解消するための施策 | 経営層から「組織全体の成果」を重視するメッセージを発信する | ・他部門との協力が評価される仕組みを作る ・プロジェクト型組織を推進する |
2-1. 評価制度の弊害を解消するための施策
自部門の成果だけが評価される仕組みが続くと、どうしても部門同士の連携意識は薄れてしまいます。その結果、他部門と協力するメリットを感じられず、横のつながりは生まれにくくなります。
このような状況を打開するためには、「組織全体で成果を出す」という視点を管理職に持ってもらうことが重要です。評価制度の弊害を解消するための具体的な施策は次の通りです。
「部門間協力を評価する仕組み」をテスト導入
現在の評価制度が、管理職が自部門の成果を優先しがちで、部門間の協力が評価されにくい場合、「部門間協力を評価する仕組み」をテスト導入することが効果的です。
部門間協力を評価する仕組みを実施することで、管理職が「連携すれば評価される」と認識し、積極的に他部門と協力するようになります。
ただ、評価制度を急に大きく変更すると、管理職の混乱を招いたり、適切な評価基準が定まらないリスクがあります。そのため、まずは一部の部門でテスト導入を行い、実際の運用で問題点や改善点を洗い出すことが重要です。
また、テスト導入を行うことで、管理職の反応や行動変化を確認し、どのような指標が適切に機能するかを検証できます。これにより、最終的に全社導入する際の効果を最大化し、スムーズな移行を実現できます。
【具体的な実施方法】
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評価項目の選定
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まず、どのような協力行動を評価するかを決めます。例えば、「他部門への貢献度」や「横の連携による成果」などが考えられます。現在の評価基準と整合性を取りながら、連携行動が適切に評価される形を検討します。
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試験導入の対象を決める
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次に、試験導入の対象を決めます。まずは1〜2部門を対象にし、小規模な範囲で効果を確認することが望ましいでしょう。
例えば、営業部と製造部、開発部とマーケティング部など、連携の必要性が高い部門を選定することで、より実践的な評価が可能になります。
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評価方法の策定
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評価方法の策定も重要なステップです。例えば、上司評価の一環として「他部門との協力状況」をフィードバック項目に追加し、管理職が他部門とどのように協力したか、具体的な事例を報告する仕組みを整えます。
このような仕組みを導入することで、管理職は連携の重要性を認識しやすくなります。
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フィードバックの仕組みを整える
1on1や定例レビューの中に、部門間連携に関する振り返りの時間を設けます。また、他部門と連携して成果を出した事例を社内に共有することで、好事例の横展開がしやすくなります。 -
試験結果の振り返りと調整
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最後に、試験導入の成功基準を明確にし、振り返りのポイントを設定しましょう。
テスト導入の結果を3〜6ヶ月後に分析し、以下の観点から評価を行います。
・管理職の行動変化:部門間の会話や協力が増えたか?
・業務改善の効果:他部門との連携により、業務がスムーズになったか?
・評価の納得感:管理職が新しい評価基準を受け入れているか?
その後、経営層や人事部門と協議し、全社展開に向けた改善策を検討します。試験段階で得られたデータをもとに、評価制度の改善点を明確にし、より実効性の高い仕組みへと進化させることが重要です。
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これにより、部門間の助け合いが自然と生まれ、業務のスムーズな進行につながります。また、試験的に運用することで、評価の仕組みを適切に設計し、全社展開時のスムーズな導入を実現できます。
MBO(目標管理制度)に「横の連携」項目を加え、評価基準に組み込む
評価制度に弊害がある場合、MBOの評価基準に「横の連携」項目を加えることが効果的です。
MBOが個別の業績評価に偏っていると、管理職は自部門の成果ばかりに目が向き、他部門との協力に積極的になりづらいためです。横の連携を評価基準に明記することで、「協力することが評価につながる」と認識され、行動を変えるきっかけになります。
【具体的な実施方法】
既存のMBO評価基準を見直す
まずは現在のMBOの評価項目を整理し、他部門との協力に関する要素が含まれているかを確認します。入っていない場合は、「他部門との協業で成果を出したプロジェクト数」や「他部門との協力による業務改善提案の件数」など、具体的な連携行動を数値化できる項目を新たに設定します。
管理職に新しい評価基準を説明する
評価制度は「何が評価されるか」が明確になっていないと、現場では形骸化しがちです。評価項目に「横の連携」が追加された理由や期待される行動について、説明会や1on1などで丁寧に伝えましょう。特に、「どのような協力が評価されるのか」まで具体的に共有すると、管理職の納得感が高まり行動につながります。
評価プロセスに組み込み、定期的に検証する
新たな評価項目を組み込んだら、定期的にその活用状況と効果を確認します。たとえば、半期ごとの評価面談で、他部門との協力エピソードをレポート形式で提出してもらうといった運用が効果的です。評価者がきちんとフィードバックし、必要があれば評価項目の内容や重みを調整することで、継続的な改善につなげましょう。
この施策を行うことで、「横の連携が評価される」ことが管理職に浸透し、自然と協力を意識した行動が増えていきます。
成果指標を「個別KPI」から「組織KPI(部門横断的な成果)」へシフト
評価制度に原因がある場合、管理職の評価指標を「個別KPI」から「組織KPI(部門横断的な成果)」へシフトすることが効果的です。
個別KPIのみに偏った評価制度では、管理職が自部門の目標達成を最優先し、部門間の協力が後回しになってしまいます。組織全体の成果を評価に含めることで、他部門と協力し合う動機が生まれ、横の連携が自然と強化されていきます。
【具体的な実施方法】
既存のKPIを見直す
まずは、現在のKPI体系を確認し、「部門横断的な取り組み」がどの程度評価に反映されているかを洗い出します。多くの企業では、「売上」「コスト削減」「進捗率」など自部門内で完結する指標ばかりが重視されています。その場合、「部門間での共同プロジェクト実施数」「他部門の成果に貢献した回数」などを追加していく必要があります。
組織KPIの具体的な項目を設定する
次に、管理職が取り組みやすいように、組織KPIを具体化します。例として、「他部門と共同で行った施策で得られた成果」「部門横断プロジェクトへの参加回数」「他部門からの業務改善提案受入数」などがあります。数値化しにくい場合は、自己申告+他者評価(例:360度フィードバック)を組み合わせて定性面も評価できるようにすると効果的です。
評価制度に組み込み、成果を可視化する
設定した組織KPIは、評価シートやダッシュボードなどに反映させ、定期的に進捗を確認できるようにします。特に経営会議や部門長会議などで、「横の連携が業績にどう貢献したか」という視点で事例を共有すると、現場にも連携の意義が伝わりやすくなります。
定期的な振り返りと運用改善を行う
制度を導入したら終わりではありません。四半期や半期ごとに、KPIが実際の行動変容や成果にどうつながったかを確認します。場合によっては項目の内容や重みを調整しながら、制度を成熟させていきましょう。現場の声をヒアリングしながらアップデートを重ねることが、制度の定着と納得感を高めます。
この施策を行うことで、管理職は「自部門の成果だけでなく、組織全体への貢献も求められている」と認識するようになります。
評価制度の見直しは、管理職が「横の連携」を意識し、組織全体の成果を高めるために欠かせない要素です。
一度にすべてを導入するのではなく、小規模なテスト導入からスタートし、徐々に組織全体に広げていくことが成功の鍵となります。
2-2. 情報共有の壁を解消するための施策
情報が適切に共有されないと、部門間の連携が滞り、意思決定のスピードが低下する原因となります。特に、異なる専門性や業務視点を持つ部門同士では、情報共有の仕組みが整っていないと誤解や非効率が生じやすくなります。
この問題を解決するために、短期的に実施できる施策と、中長期的な改善策を組み合わせて部署間での相互理解を進めることが重要です。
部門間での「クロスブリーフィング」を実施
部門間の相互理解を深めるために「クロスブリーフィング」を定期的に実施することが効果的です。
部門ごとに業務内容や目標が異なると、お互いの立場や事情を理解できず、連携の妨げになります。クロスブリーフィングを通じて、管理職同士が自部門の状況や課題を共有し合うことで、誤解や固定観念が解消され、連携しやすい土台がつくられます。
※クロスブリーフィングとは、部門間の情報共有と相互理解を促進するためのミーティングのことです。
【具体的な実施方法】
クロスブリーフィングの目的を明確にする
まずは「何のために実施するのか」を全員に共有しましょう。たとえば「相互理解を深めて業務の連携をスムーズにする」「他部門の現状や課題を知り、自部門の業務に活かす」など、目的を明確にすることで参加意義が伝わりやすくなります。
開催頻度と対象者を決める
月1回、管理職同士を対象に開催するのが一般的です。毎回2〜3部門が交代で発表し、残りの部門が聞き手に回る形式がおすすめです。参加者が負担を感じないよう、時間は30〜60分程度が理想です。
発表内容のテンプレートを用意する
「自部門の目標」「現在の進捗」「抱えている課題」「他部門に知っておいてほしいこと」など、話す項目をテンプレート化しておくと、発表がスムーズになります。資料を用意する場合は、1〜2枚に収めると負担が少なくなります。
質疑応答や対話の時間を設ける
発表後は5〜10分ほど時間をとって、他部門からの質問やフィードバックを受け付けましょう。一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションが生まれることで、理解が深まりやすくなります。
内容を記録・蓄積し、社内で共有する
実施内容は議事メモや資料を社内ポータルや共有フォルダに保管し、後からでも閲覧できるようにします。新任管理職や異動者にも役立つ「部門理解の辞書」として活用できます。
この取り組みによって、管理職同士が「お互いの業務や事情を理解できている」状態をつくることができ、日常のコミュニケーションや協力が格段にスムーズになります。
部門ごとのデータをまとめて可視化
情報が部門ごとに分断されていると、正確な意思決定が難しくなります。そこで、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入し、重要な指標や進捗を可視化することが効果的です。
共通のデータを「見える化」することで、管理職同士が同じ情報をもとに会話できるようになり、意思決定のスピードと質が向上します。
【具体的な実施方法】
可視化すべきKPI・情報を明確にする
まずは「どんな情報を全社で共有すべきか」を決めましょう。たとえば、営業なら売上進捗、製造なら生産計画と実績、マーケティングならリード獲得数など。自部門だけでなく、他部門との連携に影響を与える指標を優先して選定します。
BIツールや既存の共有ツールを活用する
Tableau、Google Looker Studio、Power BIなどのBIツールを使うと、リアルタイムでの可視化が可能です。もし新しいツールの導入が難しければ、まずはExcelやスプレッドシートでシンプルなダッシュボードを作成し、定期的に更新する方法から始めても構いません。
ダッシュボードの更新ルールと閲覧方法を整える
「毎週月曜に営業が更新」「全員が火曜朝の会議で確認」など、更新タイミングと閲覧タイミングをルール化すると運用が安定します。ダッシュボードは誰でも簡単にアクセスできる場所に設置し、リンクや説明をポータルにまとめておくとよいでしょう。
活用の場を意図的に設ける
ただ情報を公開するだけでは活用されません。月次会議や部門間ミーティングでダッシュボードを使い、「この数値をもとに、どのように連携するか」といった議論を行いましょう。見える化されたデータが「会話のきっかけ」になることが大切です。
この施策を実施することで、管理職同士の認識のズレを防ぎ、根拠ある判断が可能になります。また、連携すべきタイミングを全員が把握しやすくなり、行動のスピードも上がります。
部門間の情報共有ガイドラインを作成
情報共有の質と効率を向上させるためには、「どの情報を、どのタイミングで、どのツールで共有するか」を明確にするガイドラインを作成することが有効です。
部門間で情報共有のルールが曖昧だと、「伝えたつもり」「聞いていない」というズレが起きやすくなるためです。共有すべき内容や手段が明確になることで、管理職同士の連携がスムーズになり、意思決定のスピードも向上します。
【具体的な実施方法】
共有すべき情報とタイミングを洗い出す
まずは、各部門の業務フローを確認し、「どの場面で情報共有が必要か」を整理しましょう。たとえば、「新規プロジェクトの開始時」「トラブル発生時」「週次の業務報告」などが該当します。実際に過去に情報伝達の遅れで問題が起きたケースを振り返るのも有効です。
情報の種類と適切な共有手段を決める
「緊急性の高い情報はチャット(SlackやTeams)」「重要な決定事項はNotionやGoogleドキュメントに記録」「進捗報告は週次でスプレッドシートに入力」など、情報の性質ごとに適したツールと手段を設定します。誰が、いつ、どのツールで共有するかを具体的に定めましょう。
ガイドラインをドキュメント化し、全員に共有する
決定したルールは1枚のシンプルなドキュメントにまとめ、社内ポータルや共有フォルダに掲載します。新任の管理職にもわかりやすいように、「何を・いつ・どこで・誰が共有するか」が一目でわかるフォーマットにしましょう。
運用を見直し、柔軟に改善する
ガイドラインは一度作って終わりではありません。実際に運用してみて「共有の手間がかかる」「誰も使っていない」などの課題があれば、現場の声をもとに見直します。定期的に改善を繰り返すことで、より実用的なルールとして定着していきます。
この取り組みにより、管理職同士の情報共有に対する認識が揃い、やりとりの質が高まります。結果として、業務の無駄や連携ミスが減り、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
情報共有の壁を解消することは、部門間のスムーズな連携を促し、組織全体の意思決定のスピードと精度を向上させるために不可欠です。
情報共有の仕組みを一度整えたとしても、組織の成長や変化に応じて新たな課題が発生する可能性があります。そのため、定期的に情報共有のプロセスを見直し、常に最適な形へと改善を続けることが重要です。
2-3. 心理的要因(対立・不信感)を解消するための施策
部門間の対立や不信感があると、協力関係の構築が難しくなり、業務の非効率や目標達成の障害となります。
この問題を解決するためには、相互理解を深める施策と、心理的安全性を向上させる取り組みを組み合わせることが重要です。
短期施策
・「管理職ピアコーチング」を導入し、部門横断で1on1を実施
中長期施策
・心理的安全性を高める研修を実施し、対立を生産的な議論に変える
・部門間連携の成功事例を社内で積極的に共有し、良い連携を文化として定着させる
「管理職ピアコーチング」を導入し、部門横断で1on1を実施
部門間の相互理解を深めるために、異なる部門の管理職同士で定期的に1on1ミーティングを行う「ピアコーチング」を導入することが効果的です。
部門の壁を越えてお互いの状況や課題を共有することで、相互理解が深まり、連携の障害になっている誤解や固定観念の解消につながります。加えて、日頃の業務では見えにくい「他部門のリアルな課題」への理解も得られ、協力の糸口が自然と生まれるようになります。
【具体的な実施方法】
ペアを決める
まずは人事や経営企画部門が主体となって、部門間でランダムまたは意図的にペアを設定します。たとえば、「営業×製造」「開発×カスタマーサポート」など、普段あまり関わりのない組み合わせを優先して組むと、新しい視点が得られやすくなります。
1on1の頻度とテーマを決める
月に1回、30分〜1時間を目安に実施します。最初は「最近の業務の課題」「自部門の現状と他部門に期待すること」など、テーマをあらかじめ用意しておくと話しやすくなります。形式は自由ですが、最初の数回はテンプレート(例:3つのトピックを共有→感想→気づき)を用意するとスムーズです。
対話内容を軽く記録・共有する
毎回の対話で出てきた気づきやアイデアを、簡単にメモにまとめて部門内や人事に共有することで、学びや気づきが組織全体に還元されます。「他部門の業務を初めて知った」「実は似た悩みを抱えていた」など、気づきが可視化されること自体が心理的安全性の向上にもつながります。
継続しやすい仕組みを整える
1on1が形骸化しないよう、実施状況を人事側がゆるやかにトラッキングし、定期的に「よかったエピソード」などを社内で共有すると、良いサイクルが回りやすくなります。初回実施後に「ピアコーチングやってみてどうだったか」の簡単なアンケートを取るのもおすすめです。
これにより、部門間の対話のハードルが下がり、管理職同士の関係性が少しずつフラットになります。結果として、問題が起きたときも「相談できる」「頼れる」関係ができ、連携のスピードと質が向上します。
心理的安全性を高める研修を実施し、対立を生産的な議論に変える
心理的要因を解消するために、心理的安全性を向上させる研修を実施します。
部門間の対立や不信感は、意見を言いづらい雰囲気や過去のすれ違いが原因で起こることが多く、放置すると「話し合ってもムダ」「協力しにくい」といった空気が定着してしまいます。心理的安全性の概念とその実践方法を学ぶことで、管理職自身が建設的に対話できる土台を築くことができます。
【具体的な実施方法】
研修の目的を明確にする
まずは「対立を恐れず、前向きに意見を言い合える関係をつくる」ことを目的として掲げましょう。単なるコミュニケーション研修ではなく、心理的安全性の重要性や、自分の関わり方が他者にどう影響するかを体感しながら学べる内容を選ぶのがポイントです。
実践中心のプログラムを設計する
座学だけでなく、ロールプレイやケーススタディを取り入れた「体感型」の内容が効果的です。たとえば、「フィードバックをもらう/返す」場面を実践したり、部門間で起こりがちな対立シーンをテーマにディスカッションすることで、現場に即した気づきを得られます。
参加メンバーを部門横断で編成する
管理職同士の相互理解を深めるため、研修は部門ミックスで行いましょう。「営業×製造」「開発×マーケティング」など、普段は関わりが薄い管理職同士が同じ場で対話することで、関係構築にもつながります。
フォローアップを実施する
研修だけで終わらせず、実践を促すフォローアップが重要です。1〜2ヶ月後に「実践報告会」や「振り返り1on1」を実施し、研修で学んだことをどのように活かしているかを共有し合いましょう。良い実践例が出てきたら社内報などで紹介するのもおすすめです。
アーティエンスでは、管理職が心理的安全性の理論を理解し、実践的なスキルを習得できる心理的安全性向上研修を提供しています。本研修では、実際の職場で使えるフィードバック技術や、対立を成長機会に変えるコミュニケーション手法を学ぶことができます。
この施策を行うことで、管理職が安心して意見を言い合える土壌が生まれ、対立が「衝突」ではなく「前進のための議論」として機能するようになります。結果的に、部門間での建設的なやり取りが増え、連携が促進される組織文化が育まれます。
部門間連携の成功事例を社内で積極的に共有し、良い連携を文化として定着させる
心理的要因を解消するために、部門間連携の成功事例を可視化・共有することが効果的です。
部門横断での成功があっても、それが個別の美談で終わってしまっては、他の管理職に波及しないためです。成功事例を定期的に発信し、「部門を越えて協力するのは成果につながる」「評価される行動だ」という文化を組織に根付かせる必要があります。
【具体的な実施方法】
事例を収集する
まずは、過去に部門を超えた協力で成果が出たプロジェクトを洗い出します。例:営業と製造が連携し短納期案件を受注できた、マーケと開発が協力し新商品のリリースがスムーズに進んだなど。関係者へのヒアリングを通じて、協力のきっかけや、どのように乗り越えたかも含めた「ストーリー性のある事例」として整理します。
社内報やミーティングで共有する
収集した事例は、社内ニュースレターや全社朝礼、部門長会議などで定期的に紹介します。文面だけでなく、担当管理職のインタビュー動画や対談形式で発信すると、リアルな温度感が伝わりやすく、他の管理職にも「自分もやってみよう」と思わせるきっかけになります。
事例データベースを作成する
成功事例はナレッジとして蓄積し、いつでも閲覧できるように社内ポータルなどにまとめましょう。カテゴリ分けやキーワード検索ができるようにしておくと、新たな連携を始めたいときの参考になります。特に、部署やプロジェクトのテーマ別に分類すると実用性が高まります。
新しい事例を継続的に追加・表彰する
単発で終わらせず、事例の更新を継続することが重要です。定期的に「月間ベスト連携賞」「連携チャレンジ賞」などを設けて表彰し、管理職のモチベーションを高めることも効果的です。評価制度と結びつけると、より行動が加速します。
この施策を行うことで、管理職にとって「横の連携=価値ある行動」という認識が浸透し、自然と協力が生まれる文化が育っていきます。
心理的要因(対立・不信感)は、部門間の連携を阻害する大きな要因となります。しかし、本章で紹介した施策を実施することで、部門間の信頼関係を構築し、協力しやすい環境を整えることができます。
2-4. 経営層が横の連携を重視していないことへの施策
経営層が部門間の連携を重視していないと、管理職は自部門の目標を優先しがちになり、横のつながりが生まれにくくなります。
この課題を解決するために、経営層が部門間連携の重要性を理解し、それを組織全体に浸透させる施策を実施します。
短期施策
・経営会議の議題に「部門間連携の成果報告」を追加する
中長期施策
・「部門横断タスクフォース」を設置し、経営層が関与するプロジェクトを増やす
・経営層の評価制度にも「横の連携の促進度」を組み込み、トップダウンで推進する
経営会議の議題に「部門間連携の成果報告」を追加する
管理職の横の連携を促進するためには、経営会議で「部門間連携の成果報告」を正式な議題として取り上げることが効果的です。
横の連携について会議で取り上げることで、経営層は意識を向けやすくなり、また現場の管理職は「連携が評価される」「経営層も注目している」と実感できます。これにより、連携への意欲や行動が自然と高まっていきます。
【具体的な実施方法】
成果報告のフォーマットを作成する
まずは、どのような内容を報告するのか、統一したフォーマットを用意します。たとえば、以下のような項目を盛り込むと良いでしょう。
-
連携した部門とその目的
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協働のプロセス(どう連携したか)
-
得られた成果や効果(定量・定性)
-
連携を通じて得た学び・課題
報告しやすいよう、A4一枚程度に収まるシンプルなフォーマットにすることをおすすめします。
報告の対象を決める
はじめはすべての部門ではなく、モデルケースとして連携事例がある部署に絞って報告してもらいます。営業×製造、開発×マーケティングなど、成果が出やすい組み合わせを選定することで、経営会議でもポジティブな議論につながります。
経営会議の定例議題に組み込む
成果報告は単発で終わらせず、経営会議の「定例議題」として設定します。たとえば「四半期に1回」「毎月の最終週」など、あらかじめ日程を決めておくことで、各部門が計画的に連携を振り返る仕組みが生まれます。
経営層からのコメントをフィードバックする
会議内で共有された成果に対し、経営層から「良い取り組みだった」「こういう連携を今後も評価したい」といったポジティブなフィードバックを出します。報告した管理職のモチベーション向上につながり、他部門にも連携意識が波及します。
この施策を行うことで、「横の連携」が組織全体にとって重要なテーマであることが明確になります。現場の管理職も「評価される活動」として前向きに取り組むようになり、自然と連携の文化が醸成されていきます。
「部門横断タスクフォース」を設置し、経営層が関与するプロジェクトを増やす
部門間の連携を強化するには、「部門横断タスクフォース」を設置し、経営層が定期的に関与するプロジェクトを推進することが効果的です。
部門を超えた協働の場を設けることで、部門間の壁が取り払われ、全社的な課題解決がスムーズに進みます。また、経営層が関与することで、プロジェクトの優先順位が上がり、連携への意識が管理職全体に浸透します。
【具体的な実施方法】
解決すべきテーマを選定する
まずは「このテーマは一部門だけで解決できない」と思われるような、複数部門に関係する課題を明確にします。たとえば、
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納期短縮
-
顧客満足度の向上
-
新規事業の立ち上げ
-
業務効率の改善
といったテーマが該当します。
テーマは経営層主導で選定することで、全社的な優先度が高まりやすくなります。
タスクフォースメンバーを選定する
次に、テーマに関連する部門から1〜2名ずつ管理職を選出し、実働部隊を組織します。業務負荷を考慮しながらも、推進力のあるメンバーを選ぶことが成功の鍵です。
加えて、経営層が1人「エグゼクティブスポンサー」として参加し、意思決定やサポートを担うと、現場が動きやすくなります。
活動の運営ルールを決める
月1回の定例ミーティング、成果物の提出タイミング、議論の進め方などを明文化し、タスクフォースとしての共通ルールを整備します。これにより、活動が属人化せず、継続的な運用が可能になります。
成果や進捗を全社に共有する
タスクフォースの取り組み内容や途中経過、成果は、社内報・経営会議・全社集会などを通じて全社員に共有します。他部門の管理職もその活動を知ることで、「連携によって成果が出る」ことを実感し、次の連携に前向きになります。
この施策を行うことで、部門間の協働が「特別なこと」ではなく「当たり前の業務」として定着していきます。経営層がプロジェクトに関与することで、組織全体が連携に向かって動き出し、成果を生み出しやすい土壌が形成されます。
経営層の評価制度にも「横の連携の促進度」を組み込み、トップダウンで推進する
部門間の連携を全社的に進めるためには、経営層自身の評価指標に「横の連携促進度」を加えることが効果的です。
管理職に連携を求めるだけでは限界があります。トップ自らが行動で示し、それが評価にもつながる仕組みを整えることで、組織全体の一体感が生まれます。経営層の姿勢や行動は、管理職の意識に強く影響するため、ここからのアプローチが連携強化のカギとなります。
【具体的な実施方法】
評価指標として「横の連携促進度」を設ける
まずは、役員や経営幹部のMBO(目標管理)や360度評価の中に、「部門間の協力推進に関する指標」を新たに設けます。
たとえば、
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部門横断プロジェクトの主導数
-
管轄部門以外との連携により生まれた成果
-
管理職同士の協力を後押しした事例数
など、行動と成果の両面で可視化できる指標を設定します。
評価対象となる具体行動を明示する
評価されるのは「どのような行動か」を明確に伝えることが重要です。
たとえば、
-
他部門の会議に参加し、連携を提案した
-
タスクフォースに経営層として積極的に関与した
-
複数部門を巻き込んだプロジェクトを立ち上げた
といった、具体的な行動例を共有し、「評価されるイメージ」を浸透させます。
評価結果をフィードバックに活用する
評価後は、数値やコメントだけで終わらせず、「なぜその評価になったのか」「今後どうすればより連携を促進できるのか」といったフィードバックを行います。これにより、経営層自身も継続的に連携促進への意識を高めていけます。
この施策を行うことで、「連携を推進すること自体がリーダーの重要な役割である」と明確になります。トップダウンでのメッセージと実行が揃えば、組織全体に連携文化が根づき、管理職も安心して横の協力に取り組むことができます。
経営層が横の連携を重視することで、管理職の行動も変わり、組織全体の協力体制が強化されます。
短期施策でまず管理職の連携への意識を高め、中長期施策として、経営層が直接関与する仕組みを作ることで、部門間の協力が組織全体に定着し、業務の効率化や成果の向上につながります。
2-5. 物理的な距離・接点不足を解消するための施策
部門間の連携がうまくいかない原因の一つに、物理的な距離や接点の不足があります。異なるフロアや拠点に配置されている場合、管理職同士が顔を合わせる機会が少なくなり、結果として意思疎通が不足しがちです。
この問題を解決するために、短期施策と中長期施策を組み合わせ、意図的に部門間の交流の機会を作ることが重要です。
月1回、部門横断でランチ会を実施する
異なる部門の管理職が気軽に会話できる場を作るために、月1回の部門横断ランチ会を実施することが効果的です。
業務以外のカジュアルな場で交流することで、心理的ハードルが下がり、日頃話す機会のない管理職同士の接点が生まれます。結果として、日常業務でも声をかけやすくなり、協力の土台が築かれていきます。
【具体的な実施方法】
参加者の組み合わせをランダムに決める
毎月ランダムに異なる部門の管理職を組み合わせてグループを作ります。3〜4名程度の少人数にすることで、会話が活発になりやすくなります。組み合わせは人事などが事前に調整し、「普段接点が少ない」ことを重視すると効果的です。
ランチ代は会社が負担する
参加のハードルを下げるために、ランチ代は会社が負担しましょう。社内の食堂や外部の飲食店など、リラックスできる環境を選ぶと会話も弾みやすくなります。形式ばらずに、「気軽に話せる場」として設計することがポイントです。
会話テーマを設ける(希望制)
「最近の他部門との連携で困っていること」「社内での情報共有の工夫」など、テーマをいくつか提示し、話題に困らないようにしておくのも有効です。あくまで自由参加型で、話したいテーマがあれば共有するスタイルが良いでしょう。
この取り組みにより、管理職同士の関係性が少しずつ深まり、「ちょっと相談したい」が生まれるきっかけが増えていきます。仕事の枠を超えた信頼関係が、部門横断の協力や課題解決をスムーズにする土台となります。
オフィスレイアウトを見直し、物理的な距離を縮める
物理的な距離・接点不足を解消するためには、協力が必要な部署同士の席を近づけるなど、オフィスレイアウトを見直すことが効果的です。
業務の合間に気軽な声かけができる距離感をつくることで、自然と会話が生まれ、連携のハードルが下がります。これは、特別な制度を設けなくても連携の習慣を根付かせるシンプルかつ有効なアプローチです。
【具体的な実施方法】
協力関係が深い部門同士を洗い出す
まず、業務上の接点が多い、もしくは今後連携を強めたい部門同士を洗い出します。たとえば、営業とマーケティング、開発とカスタマーサポートなど、日常的な連携が必要な関係性を整理します。
近接配置のレイアウト案を作成する
次に、協力関係がある部門同士が隣接できるようにレイアウト案を作成します。完全な配置換えが難しい場合でも、「共用エリアを挟んで隣同士にする」「出入口を共有する」など、接点が生まれやすい工夫を取り入れましょう。
トライアルで一部フロアから実施する
いきなり全社の席替えを行うのではなく、まずは一部のフロアやチームからトライアルで導入してみます。その際、「移動によるメリット」や「会話頻度の変化」などを簡単に観察・記録し、効果を測定します。
利用者の声をもとにレイアウトを改善する
実施後は、実際に働く管理職やメンバーからのフィードバックを集め、「使いやすかった配置」「会話が増えたかどうか」などを確認します。これにより、形だけでなく“効果の出る”レイアウト変更へと調整できます。
この施策を通じて、管理職同士が物理的に近づくことで、必要なときにすぐ相談できる関係性が築かれます。ちょっとしたやり取りがしやすくなることで、連携が自然に生まれやすくなり、業務全体のスピードと質が向上していきます。
合同研修・ワークショップを実施し、部門を超えたつながりを強化する
部門横断での合同研修やワークショップを定期的に開催することは、管理職同士の信頼関係を築くきっかけとして効果的です。
普段は関わりの少ない他部門の管理職と対話し、共通の課題に取り組むことで、相互理解が深まり、業務上の連携がスムーズになります。特に、研修のテーマに「部門間連携」や「コミュニケーション」を掲げることで、連携強化への意識づけにもなります。
【具体的な実施方法】
テーマを「部門連携・対話」に設定する
まず、研修やワークショップのテーマは「部門間連携」「共通課題の解決」「心理的安全性」など、横のつながりを目的としたものに設定します。目的が明確であることで、参加者の意識も揃いやすくなります。
各部門から管理職を選出し、混合グループをつくる
参加者は、部門の垣根を超えてランダムまたは意図的にミックスしたグループで編成します。たとえば、営業・製造・人事・開発が1グループになるように設定することで、普段交わらない視点の交換が可能になります。
共通課題に対してグループワークを行う
「自社の部門間連携を妨げている要因は何か?」「今より良くするために自分たちにできることは?」といった問いを投げかけ、グループごとにアイデアを出し合います。この時間が、他部門への理解を深め、対話を生む場になります。
成果や気づきを発表・共有し、全社に還元する
各グループで出た意見や成功事例、アイデアを社内で共有します。社内ポータルへの掲載や、社内報での発表などを通じて、参加者以外の管理職にも波及させましょう。
このような研修を通じて、「他部門の管理職と話しやすくなった」「共通言語ができた」などの変化が生まれ、業務における協力がスムーズになります。部門の壁を越えて対話できる土壌が整うことで、組織全体の連携力と課題解決力が高まります。
なお、アーティエンスでは、管理職向け研修を多数ご提供しています。ワークショップ型で実践的に学べるプログラムや、貴社の課題に合わせたカスタマイズも可能です。
貴社の課題や状況に合わせて、最適な研修プランをご提案いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
物理的な距離や接点不足によって管理職間の連携が希薄になると、部門ごとのサイロ化が進み、組織全体のパフォーマンスが低下します。今回紹介した施策を実施することで、管理職同士が意図的に接点を持ち、自然な形で協力関係を築けるようになります。
2-6. 部署ごとの力関係の固定化を解消するための施策
特定の部門が優位に立ち、他部門との力関係が固定化されると、組織全体の連携が阻害される可能性があります。この問題を解決するためには、各部門の役割を適切に評価し、組織全体としての成果を重視する文化を醸成することが重要です。
この課題に対し、短期施策と中長期施策の両面から取り組むことで、より公平で協力的な組織環境を実現します。
経営層から「組織全体の成果」を重視するメッセージを発信する
部署ごとの力関係の固定化を解消するために、経営層が「組織全体の成果を重視する」というメッセージを明確に発信することが効果的です。
部門ごとの目標や評価ばかりが強調されていると、管理職は自部門の成果を最優先しがちです。トップが率先して「会社全体で成果を上げることが重要」と発信することで、横の連携に対する組織全体の意識を変えていくことができます。
【具体的な実施方法】
全社ミーティングや経営会議でメッセージを発信する
四半期に一度の全社会議や経営会議などの場で、経営層から「部門間の協力によって成果が出た事例」や「協力があったからこそ達成できた成果」を紹介し、「組織全体の成果に貢献する行動」を評価する姿勢を示しましょう。
成功事例をストーリーとして語る
単なるスローガンではなく、「営業と製造が協力して納期短縮を実現した」「開発とサポート部門が連携し、顧客満足度が上がった」など、リアルな事例を具体的に共有することで、メッセージの説得力が高まります。
経営メッセージを社内報・ポータルなどで継続的に発信する
1回の発言で終わらせず、社内ポータルや経営層からの月次メッセージなど、複数のチャネルを通じて繰り返し伝えましょう。組織全体に一貫したメッセージが届くことで、管理職も「これは本気なんだ」と認識します。
ミドルマネジメントにもメッセージを共有し、部門内で伝達してもらう
ミドル層の管理職が自部門内に浸透させる役割を果たすことも大切です。「今期は◯◯部との連携強化が評価ポイントの一つ」と具体的に伝えることで、現場レベルの意識変化が起こります。
この施策を通じて、「自部門の成果だけでは不十分。会社全体で成果を出すことが大切だ」という価値観が、組織に浸透していきます。経営層の明確なメッセージが、管理職一人ひとりの判断や行動にも影響を与え、部門横断の協力体制が生まれやすくなります。
他部門との協力が評価される仕組みを作る
部門間の協力を正当に評価するために、管理職の評価に「他部門との協力」を明示的に組み込む仕組みをつくることが効果的です。
評価制度が「個人や自部門の成果」だけに偏っていると、管理職はどうしても横のつながりよりも自部門の目標達成を優先してしまいます。部門間の協力が正当に評価されることで、「協力することが自分の成果につながる」と実感でき、行動の変化を促すことができます。
【具体的な実施方法】
表彰制度や社内報を活用し、協力を“見える化”する
「部門間協力賞」などの表彰制度を設け、特に効果的な連携事例を社内で表彰します。また、社内報や全社朝礼、社内ポータルなどでその事例をストーリーとして紹介することで、「協力することが価値ある行動である」という文化が根づいていきます。
評価項目として「横の連携」を正式に追加する
人事評価制度の中に、「他部門と連携して成果を出したこと」「部門をまたいだプロジェクトへの貢献」などを明確な評価項目として追加しましょう。導入初期はモデルケースの共有や、具体的にどう評価されるかの説明も欠かせません。
360度評価などを活用し、連携行動を可視化する
他部門からのフィードバックが直接評価に反映される仕組みとして、360度評価を活用するのも有効です。連携の質や関係性の深さが数字として表れるため、管理職自身の意識づけにもつながります。
この施策を行うことで、「他部門との協力=評価される行動」という認識が管理職に浸透し、日常業務でも横の連携を自然に意識するようになります。
プロジェクト型組織を推進する
部署ごとの力関係の固定化を解消するために、部門横断のプロジェクト型組織を導入・活性化させることが効果的です。
固定的な組織構造では、部門間の連携が限定的になりがちだからです。プロジェクト型組織を取り入れることで、目的や課題に応じて部門を越えたチームが組まれ、管理職同士が自然と関わる機会が増えます。役割もプロジェクトごとに流動的になるため、特定部門の力関係が固定化されにくくなります。
【具体的な実施方法】
目的に応じたプロジェクトチームを立ち上げる
まずは「顧客満足度向上」「新製品の開発」「業務プロセスの改善」など、部門を越えた視点が求められるテーマでプロジェクトを設定しましょう。その際、各部門から適任者を選出し、チームを構成します。プロジェクト期間は短期(1〜3ヶ月)でもOKです。
プロジェクトごとに主導部門やリーダーを変える
常に特定の部門や人が主導しないよう、テーマや状況に応じてリーダーシップを分担します。たとえば、「営業主導のプロジェクト」「人事主導の仕組みづくり」など、リーダーシップの持ち回り制を導入すると、力関係のバランスが取りやすくなります。
プロジェクトの成果とプロセスを社内で共有する
活動の成果だけでなく、どのような連携があったのか、どのように乗り越えたかといったプロセスも社内報や全体会議などで共有します。他部門のメンバーが協力しながら成果を出している姿を見せることで、「横の連携って良いものなんだ」と体感的に理解されやすくなります。
この施策を行うことで、自然と部門を越えた関係性が築かれ、組織全体に流動性と柔軟性が生まれます。結果として、固定化された力関係に縛られず、互いに協力し合える文化が育まれていきます。
部門ごとの力関係が固定化されると、組織の柔軟性が失われ、協力が阻害されます。特定の部門に偏った評価や文化を改め、組織全体で成果を出す文化を作ることで、より強固で柔軟な組織を実現できます。
管理職の横の連携を強化することで、部門間のサイロ化を防ぎ、組織全体の成果を最大化できます。まずは短期施策から実施し、組織の変化を確認しながら、中長期施策を定着させていくことが重要です。横の連携が当たり前の文化として根付けば、組織全体の柔軟性と生産性が向上し、より強固で持続可能な企業へと成長していくでしょう。
3)成功事例に学ぶ:研修起点で横の連携を強化し、組織課題を解決
管理職の横の連携を強化し、組織課題が解決した3つの事例をお伝えします。
・関係性は悪くないが、部門間を超えた改善がなかった事例
・管理職の横連携不足から、M&Aのシナジー効果が全く出ていなかった事例
それぞれ説明していきます。
他部署との敵対関係があり、管理職同士の交流がなかった事例
項目 | 詳細 |
---|---|
業種 | コンテンツビジネス事業 |
企業規模 | 200名程度 |
実施方法 | 次世代リーダー研修・管理職研修の実施 |
目的 | 組織課題の解決(業績低下、新規事業開発の遅れ、業績低下次世代リーダー不足など) |
得られた効果 | ・業績回復 ・新サービスの収益化 ・株価上昇 ・次世代リーダー発掘による経営者交代 |
課題・背景
この組織は、何度も企業買収を繰り返されていた企業で創業者もおらず、負け癖のついていた組織でした。しかし社長(同業界大手出身)が変わったタイミングで、ヒット商品が生まれV字回復をします。
V字回復をした後、ヒット商品の集積が緩やかに減収し始めていました。この課題の背景を紐解いたときに、部門間の連携がうまくいっておらず、特に管理職の連携がボトルネックになっていることが分かりました。
実施内容
2年間にわたり、次世代リーダー研修(経営者・執行役員・事業部長)を3.5日間と、管理職研修(部長・課長)2.5日間実施しました。下記内容を行っていきました。
→ 本音を語れる状態にする
・管理職として目指したい組織の探求
→ 目指したい組織を言語化し、現場での行動につなげていく
・横連携を強化するスキルの習得(ファシリテーションスキル)
→ 会議をよりよくするためにファシリテーションスキルを習得する
結果
横連携が強化されたことにより、新サービスの挑戦が増えPDCAの速度がとても上がっていきました。収益も改善され、緩やかに株価も上昇していきます。
さらに「次世代リーダー研修」を受講した2名が、経営陣に抜擢されました。
関係性は悪くないが、部門間を超えた改善がなかった事例
項目 | 詳細 |
---|---|
業種 | 食品メーカー |
企業規模 | 200名程度 |
実施方法 | 部長クラスのアクションラーニング型プロジェクト |
目的 | 新規事業開発 |
得られた効果 | 新サービスのリリース |
課題・背景
この組織は表面上はとても関係性がよいのですが、ぬるま湯で挑戦する風土が弱いという状況でした。管理職も含め社員はとてもまじめで、問題を改善していきます。
ただし、基本受け身の姿勢で部門間の枠組みを超えてまで、新しいことにチャレンジするという意識や行動がありませんでした。
実施内容
1年間にわたり、新規事業開発プロジェクトを行っていきました。具体的には下記内容です。
→管理職の業務負担を減らし、新規事業開発を行うリソースを確保する
・新サービスを通して、社会にどのような影響を与えたいかを探求
→新サービスへのやらされ感をなくし、一体感を持った当事者意識・主体性を促す
・戦略思考を学び、新規事業開発を行っていく
→内部環境分析や外部環境分析などを行い、STPに落としていく
結果
横連携が強化されたことにより、アレルゲンフリー食品が開発され、既存顧客や新規顧客の販売が開始されました。
今まで法人への販売がメインでしたが、BTOC領域にもふみ出し、ECサイトでの販売だけにとどまらず、スーパーやコンビニ、専門店でも販売されていきます。業績だけではなく、社会の役に立っているという実感が組織全体に浸透していきました。
管理職の横連携不足から、M&Aのシナジー効果が全く出ていなかった事例
項目 | 詳細 |
---|---|
業種 | Webコンテンツビジネス事業 |
企業規模 | 200名程度 |
実施方法 | 管理職研修 |
目的 | 関連部署の連携による組織力強化 |
得られた効果 | ・業績回復 ・新規事業・サービスが複数立ち上がる |
課題・背景
M&Aが起きた後、人事制度も刷新されました。そのことにより不平等感を持つメンバーが生まれ、そのことがきっかけ関係性が悪化していきました。本来であれば管理職が中心になって他部署との連携を進めなければならないのですが、管理職自身も不満が大きく、積極的に他部署と関係を持ちません。そのためM&Aで期待していたシナジー効果がなかなか発揮されませんでした
実施内容
2年間にわたり、管理職研修10日間実施しました。下記内容を行っていきました。
→ 本音を語れる状態にする
・経営者と共に管理職として目指したい組織の探求
→ 目指したい組織を言語化し、現場での行動につなげていく
・横連携を強化するスキルの習得(ファシリテーションスキル)
→ 会議をよりよくするためにファシリテーションスキルを習得する
・管理職としてチーム及び、横連携を進めるためのスキルを学ぶ
→成功循環モデルをベースにしたチーム力強化のスキルを学ぶ
結果
管理職同士の連携が強化されたことにより、ちぐはぐだった施策の実行がスムーズに進みコロナ禍でうけた業績悪化が回復していきます。
同時に、ビジネスモデルを変えていくことも求められ、新サービスも現場から発案されました。当初期待していたシナジー効果が高まっていきました。
4)まとめ・管理職の横の連携強化はアーティエンスが解決します
本記事では、管理職の横の連携を阻害する要因を整理し、それを解決するための短期・中長期の施策を紹介しました。
管理職の横の連携が不足すると、生産性の低下や情報共有の停滞、部門間の対立など、組織全体にさまざまな弊害が生じます。しかし、適切な施策を講じることで、管理職同士の協力が活性化し、組織は次のように変わります。
管理職の横の連携が生まれることで得られるメリット
・情報共有がスムーズになり、意思決定のスピードが向上
・部門を超えた協力が進み、業務の効率化と生産性向上を実現
・ 部門間の信頼関係が強まり、対立が減少
・ 企業全体で成功事例やノウハウが共有され、成長スピードが加速
このような未来を作るためにも、今できることから取り組みましょう。
アーティエンスでは、管理職が横の連携を強化し、組織全体の成長を加速させるための管理職研修を提供しています。
「うちの管理職にも横の連携を強化してほしい…」
「実際に取り組むなら、どこから始めればいいの?」
そう感じた方は、まずは無料相談にお問い合わせください。
貴社の課題に合わせた実践的なアプローチで、管理職の意識と行動を変え、組織全体の連携を強化するための施策をお伝えします。
管理職の横の連携を強化し、組織力を向上させましょう!
管理職の横連携に悩んでいる人事責任者様・担当者様へ
こんな悩みをおもちではありませんか?
- 管理職の連携を強化できる具体的なプロセスが知りたい
- 予算内でできる最適な研修を知りたい
- 横連携不足を解決できる研修を知りたい
- 成功事例や研修効果を高めるノウハウを知りたい
横連携を強化するためのヒントが、たった1回の相談で得られます。社内研修・人材育成でお悩みの方はお気軽にご相談ください。