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~岩本絢太郎の日常~【2章 始動】

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コラム :ある新入社員の成長記録


【2章 再始動】

平井が本多さんに反旗を翻してから、早くも2ヶ月近くが過ぎていた。

季節は春を通り越し、梅雨も終わって、すでに夏本番の様相を呈している。

本当なら、GW明けには話し合いの場が持たれる予定だったけど、その機会はないまま今日に至っている。

あのひと悶着の直後から昨日まで、平井が別の事業部にサポートスタッフとして借り出されていたからだ。

平井は英語が話せるから、と竹内は言っていたけど…

海外出張を伴う大掛かりなフォーラムに新入社員を呼ぶか?
やっぱり本多さんとの一件があるんじゃないのかなぁ…

そんなことをぼんやりと考えながら、駅からオフィスまでの短い道のりを歩いていたら、トン、と背中をたたかれた。

振り返ると、平井がクールな表情で僕を見ていた。

「あ…お、はよう」
「おはよ。何ちんたら歩いてんの?」

ちんたら…の原因はあなたですよ。

「今日、昼休みに本多さんと話すから、よろしくね」
「え…」
「藤沢GMが海外出張から帰ってから、と思ったけど、あと3日もあるし、こういうのって早いほうがいいかなって」

事もなげに言ってのけた平井の横顔を、僕は茫然と眺めた。

つ、強い…

イベントの片付けに忙殺されつつ、それでいてどことなく緊張感ある午前中、僕はすでに疲れ切っていた。
本多さんと平井のちょっとした動きにも反応してしまう。ほんと、鈍い竹内がうらやましい…

「そろそろ昼メシにすっか」

本多さんが誰にというわけでもなく、それでいて僕たち全員に声をかけた。

「今日、お弁当買ってきてミーティングルームで食べませんか?」

平井が提案する。
きた…
というわけで、ミーティングルルームでは無言のままそれぞれの咀嚼だけが進み、あっという間にランチ終了。
「みんなで少し話したいと思うんですけど、いいですか?」
ほどなくして切り込む平井。さすがの竹内も珍妙な、違った、神妙な顔になっている。
「そうだな…」
本多さんの顔が少し緊張したように見えた。

「まず、先日の件ですけど、お客さま先でああいう場にしてしまったことは良くなかったと思っています。つい感情的になりました」
「それは・・・ま、俺も同罪だから」

お、なんか平和的解決されそう・・・?

「でも、言ったことは間違えていないと思っています」

ダメだ・・・

「じゃあ、お、平井が言いたいことをもう一回、説明してくれ」

本多さんがいつもより穏やかな口調で投げかけた。いま、たぶんお前って言おうとしたけど、名前に言い換えたのもわかった。

しばらくの間、平井の独壇場になった。

これまでに本多さんが言ったことや、自分たちへの態度について、静かな声で淡々と説明し始めた。ちょっと呆れるくらい細かくて、これでもかってくらいたくさんで、正直僕は驚いた。そして、主張は続く。それがいかに不愉快だったか、いかに時代錯誤か、いかに〝私たち″のパフォーマンスを下げているか…

ん?私たち…?
ちょっと引っかかった。なんか、それってちょっと違うかも…
確かに、本多さんのやり方がいいとは思わないけど、パフォーマンスを下げられてるとは思わない…
言ったほうがいいのかな、でも、なんて言おう…

「私たちは新人かもしれませんが…」
「私たちなりにも考えて工夫して…」

平井が〝私たち″と繰り返すたびに、心がざわざわしてきた。
本多さんは、無言のまま聞いている。竹内も、ちょっとなんか考えているっぽい。

「本多さんご自身は、それでもご自分が正しいと思われますか?」

そんな言葉で、平井の独壇場に幕が下された。

「・・・」

何かを考えこんでいた本多さん。少しして、顔を上げた本多さんは、僕たちに言葉を投げかけてきた。

「…岩本と、竹内も、同じ考えなのか?」
「えっと…」

言葉に詰まる僕。
「えーっと、あの、なんて言うか…」
えっと、えーっと、どうしよ、何か言わなきゃ…

「自分としては」

ロクに話せない僕をしり目に、しっかりとした口調で話しだしたのは竹内だった。

「平井さんの言ったことには半分同意しますが、半分は違う意見です」

竹内?

「確かに、あれやれ、これやれだけ言われて、きちんと説明していただかないと、自分が何やってるんだかわからないことも多いし、ほかのチームみたいに話し合って進めたり、自分の意見を伝えたいと思うこともあります」

た、確かに。僕は慌てて頷く。同意の意思表示をしたつもり。

「でも、自分はもともと抜けてることも多いし、結構手を抜いちゃうタイプだから、本多さんの下で緊張感をもってできることは、ありがたいと思ってます」

そ、そうかも。僕も同意。慌てて頷く。意思表示をしたつもり。

平井を見るも、無表情で気持ちが読み取れない。本多さんも何か考え込んでいる感じ。
僕も何か言わないと…言いたいことはあるはずなのに、うまく言葉にならない。竹内が続ける。

「僕としては…せっかく一つのチームとして働いているんだから、もっとちゃんとチームになりたいっていうか…どっちがいいとか悪いとか、そういうことじゃなくて…みんなそれぞれだし…そのうえでチームになっていくことが大事なんじゃないかと…」

た、竹内!そう、そう、僕の言いたかったことって大体そういうことっ!

「でも、話を聞こうとしてれない人と、どうやってチームをつくるの?」

平井の言葉が、緊張感を呼び戻す。
ん…うーん…なんだろ、ちょっと、平井の言葉に反発を感じるんだけど…
本多さんも何か言いたそうだけど、迷っている感じ。

「聞こうしてくれないって、平井は〝ちゃんと聞いてほしい″って本多さんに言ったことあるの?」

竹内!
全員の視線が彼に集中する。

「少なくとも僕は、平井がそういうこと考えてるって聞いたことなかったけど…?」

「・・・」

なんだか竹内が、すごい大人に見える。

「僕はチームで何かをすることが好きだし、それをしたくてこの会社に入りました。でも、チームって集まれば勝手に出来上がるわけじゃなくって、みんなで努力して作る必要があると思ってます」

なんか、すごい…。僕は、竹内という奴をまったくわかってなかったのかも…

「君たちは本当にチームの一員になっているか?」

藤沢GMの言葉が蘇る。
そっか、竹内はずっとチームとして、自分たちのことを考えていたんだ。それに比べて僕は…

「今日、みんなで飲みに行きませんか?」

気づいたら、そんなことを口走っていた。我ながら単純だけど…

「…だな、行くか!」

本多さんが少し笑ってくれた。ほっとした。竹内は親指を立てて、Good Job!嬉しそう。平井は少し躊躇しているみたい。

「平井も…来てよ」

これまでにないくらい、優しい声の本多さんにちょっと驚く。少し戸惑いながらも平井が頷く。よかったぁ…
窓から入ってくる日差しが、強い。ビールがおいしいだろうな、こういう日って。僕はまだ、ビールがおいしいって思ったことはないけど…

きっと僕たちは、今日はじめてチームとして動き出したんじゃないかと思う。

つづく…


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