- [ コラム ]
【事例から学ぶ】効果的な社員研修企画を作る4つのプロセス
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【事例あり】研修の見直しを成功させるために必要な6ステップを解説
作成日:
「現場から『この研修は役に立っていない』と言われてしまった…」
「毎年同じ内容の研修を実施しているが、社員の成長が見られない気がする…」
このように研修の効果を感じられていないものの、何をどう見直せば研修が現場に即したものになるのか、組織が期待する人材に近づくのか、迷ってしまうことも多いでしょう。
そこで本コラムでは、組織が期待する成果を引き出せる研修に改善するための見直し方法を6つのステップで紹介します。
6ステップとは次の通りです。
①現状とあるべき姿(ありたい姿)を明確にする
②現状とのギャップを分析し、原因を突き止める
③ギャップの原因を解消する適切な改善策を選択し研修を再設計する
④再設計した育成計画を上長や経営層に提案する
⑤決まった育成計画を実施し、受講者の変化を観察する
⑥必要に応じて調整する
この流れで進めることで、改善すべきことが見えてきて、効果を感じられる研修を実施できるようになります。
「研修を実施しても効果を感じられない…」という状態から、社員にも組織にポジティブな影響を与えられる研修を実施できるようにしましょう。
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専門性:パフォーマンス・マネジメント、研修開発・ワークショップデザイン、成人発達理論を活用した人材開発・組織開発
1)期待する研修効果を得るための見直し方法 6ステップ
期待する研修効果を得るための見直し方法の流れは次の通りです。
①現状とあるべき姿(ありたい姿)を明確にする
②現状とのギャップを分析し、原因を突き止める
③ギャップの原因を解消する適切な改善策を選択し研修を再設計する
④再設計した育成計画を上長や経営層に提案する
⑤決まった育成計画を実施し、受講者の変化を観察する
⑥必要に応じて調整する
①現状とあるべき姿(ありたい姿)を明確にする
まずは現状とあるべき姿(ありたい姿)を正しく把握する必要があります。現状とあるべき姿(ありたい姿)が明確でないと、どこを見直すべきかが見えてこないためです。
現状とあるべき姿(ありたい姿)を正しく把握するためのフレームワークを2つ紹介します。
ニーズの階層構造
1つ目に紹介するのは、ニーズの階層構造です。これはパフォーマンス・コンサルティングのメンタルモデルで使われている考え方で、コンサルタントがクライアントの現状を把握する際に活用します。この考え方は、自組織の現状を確認する際にも活かせます。
ニーズの階層構造では、あるべき姿(ありたい姿)を次の4つに分けて考えます。
(1)事業ニーズ
(2)パフォーマンスニーズ
(3)職場環境ニーズ
(4)能力ニーズ
※引用:ヒューマンバリュー|パフォーマンス・コンサルティングII~人事・人材開発担当の実践テキスト(2010年8月6日初版第1刷発行)
事業ニーズとは、組織が成功するために達成しなければならない、事業の目指す姿や事業目標のことです。顧客満足度の向上、業務効率の向上、優秀な人材の流出防止、事業運営コストの削減、利益の増加など、定量的に測定できるものとなります。
パフォーマンスニーズとは、事業目標を達成するために社員に求められる成果や行動のことです。階層ごとや部署ごとに内容が異なります。
職場環境ニーズとは、組織のインフラのことです。職場環境要因には、目に見えるものと目に見えないものがあります。
目に見えない職場環境要因とは、たとえば、承認、インセンティブ、期待のわかりやすさ、権限の幅などです。目に見えるものとしては、仕事で使う車やコンピュータ、仕事にふさわしい場所などがあります。
能力ニーズとは、パフォーマンスニーズを達成するために必要な能力のことです。例えば論理的思考力やコミュニケーション力、マネジメント力などがここに当てはまります。
これら4つのニーズの視点において、あるべき姿(ありたい姿)は何か、また、現状はどうであるかを確認します。
これらを確認していくと、事業と研修の方向性の連動具合や乖離を確認することができます。
ギルバートの行動エンジニアリングモデル
2つ目に紹介するのは、ギルバートの行動エンジニアリングモデル(Thomas Gilbert, Human Competence,1978)です。ギルバートは、「人が本来の力を発揮できないとき」、つまりパフォーマンスが低いときの原因を職場環境要因と個人要因の大きく2つに分けて6つの要因に整理しています。
1.期待成果(Data)
ー社員に対して何を期待しているのかを明確にしていること
2.職場の機器・ツール(Instruments)
ー職場で使う機器・ツール・システムなど仕事に必要な資源
3.インセンティブ(Incentive)
ー目標達成・高い業績をあげた時にどのようなポジティブな影響を与えてもらえるか
4.知識・スキル(Knowledge)
5.能力(Capacity)
6.動機(Motives)をあげています。
これら6つの要因が絡み合ってパフォーマンスが低くなってしまっている場合が多いため、あるべき姿(ありたい姿)は何か、また、現状は6つの点は、どのような状態であるのかを確認します。
例えば、
【ありたい姿】
営業部門で顧客満足度○%を高めてリピーターを○%に増やし、〇〇円の利益を上げるという目標を達成してほしい
といった状況であれば、ありたい姿を達成するために必要な職場の機器・ツール(Instruments)、インセンティブ(Incentive)や個人要因を書き出します。
その後、現状を書き出し不足点を確認します。すると理想と現実にギャップがあることが見えてきます。
これら2つのフレームワークを活用することで、現状とあるべき姿(ありたい姿)を明確にでき、具体的な見直しポイントを見つけていける状態を作れます。
②現状とのギャップを分析し、原因を突き止める
①で出てきた内容をもとに、あるべき姿(ありたい姿)と現状とのギャップを分析し、原因を突き止めます。
①で活用したフレームワークをもとに、現状を確認するとギャップを見つけやすいです。例えば①での例の内容を表にまとめてみると、以下のようになるかもしれません。
あるべき姿(ありたい姿) | 現状 | |
---|---|---|
事業ニーズ | 顧客満足度○%を高めてリピーターを○%に増やし、〇〇円の利益を上げる | 〇〇円の利益を上げる |
パフォーマンスニーズ | 今契約しているお客さんに対して困り事をヒアリングし改善する | 契約を取れそうな新規のお客さんにとにかく連絡する |
職場環境ニーズ | お客さんと関係性を築くために必要な費用を負担する | 毎月一番多く契約をとってとてきた人にボーナスが出る |
能力ニーズ | お客さんに信頼してもらう関係性構築力 | お客さんに危機感を感じさせて決めてもらうコミュニケーション力 |
このように書き出してみると、あるべき姿(ありたい姿)になれない原因が見えてきます。
具体的には、例えば、目的の認識がズレているため、目的をしっかり理解してもらうことが必要かもしれません。目的がズレてしまうのは、「毎月一番多く契約をとってとてきた人にボーナスが出る」という環境にも要因がありそうなので、その点を改善する必要もありそうです。
他にも今まで、信頼関係を構築するコミュニケーションスキルが身についていないということも考えられそうです。
このように、あるべき姿(ありたい姿)と現状のギャップを分析し、原因を突き止めることで、適切な解決策を導けるようになります。
③ギャップの原因を解消する適切な解決策を選択し育成手法を再設計する
②で見えてきた原因に対して適切な解決策を検討し、育成手法を再設計していきます。
適切な解決策を選択する際に助けになる考え方が「ギャップ解消モデル (GapZapper) 」です。
ギャップ解消モデルとは、従業員が理想的なパフォーマンスに到達するために、現状と目標の間にあるギャップを特定し、解消するためのフレームワークです。
下記の図で表されている通り、「職場での高いパフォーマンスの発揮」を妨げる阻害要因の主なものが3つの大きな要因(組織の外部要因、組織の内部要因、個人の内的要因)に分類されています。「組織の内部要因」と「個人の内的要因」はそこからさらに、それらの要因に必要な要素が分類されています。
※引用:ヒューマンバリュー|パフォーマンス・コンサルティングII~人事・人材開発担当の実践テキスト(2010年8月6日初版第1刷発行)
適切な解決策を選択する際に、課題がどこに当てはまるのかを確認してから進めることで、原因の特定や原因を取り除く適切な解決策を選択しやすくします。
具体的には、
「組織の外部要因では、どのような原因が見つかったのか?」
「組織の内部要因では、どのようなことが原因になっているのか?」
「個人の内的要因では、どのようなものが原因になっているのか?」
という問いを持つと考えやすくなります。
営業チームのパフォーマンスが低迷している場合を考えてみましょう。
まず、「組織の外部要因」として、競合他社の新しい製品が市場に影響を与えている可能性があります。これにより、チームの販売力が弱まっているかもしれません。
次に、「組織の内部要因」として、営業チームが十分なサポートを受けていない、あるいは適切なコーチングが行われていないことが挙げられます。マネージャーのフィードバックが不足しているため、社員が改善ポイントを把握できないのです。
また、「個人の内的要因」では、営業スキルや商品知識の不足が原因で、チームメンバーが自信を持って顧客に対応できていない可能性があります。
こうした場合には、研修プログラムの実施やコーチングによるスキル強化が有効な解決策となるでしょう。
このようにそれぞれの要因ごとに原因を確認して対策を考えることで、異なった要因が混じり合うことなく、それぞれに対しての解決策を考えやすくなります。
ギャップ解消モデルの中で育成が適切な解決策になるものとしては、例えば個人の内的要因の「スキル・知識」や組織の内部要因の「コーチングや強化」などでしょう。
これらのように育成が適切な解決策だと判断したら、次は育成方法を選択します。主な育成方法としては、研修を含めるOFF-JT、OJT、SDなどがあります。
⚫︎OFF-JT(Off the Job Training)
Off-JTとは、OJTに対して、職場を離れて、講習や研修などを行う人材教育のことを指します。
⚫︎OJT(On the Job Training)
OJTとは、組織の上司や先輩が、部下や後輩に対して具体的な仕事を与え、その仕事を通して、業務に必要な知識・技術・考え方などを指導し、修得させることを指します。
⚫︎SD(Self Development)
SDとは、自己啓発、社員による自発的な学習を意味します。OJTやOff-JTと大きく異なるのは、原則として企業に強制力がない点です。
これら3つの方法のうち、学んでほしい内容に合わせてどの方法が適切かを選択します。基本的には、OFF-JTやSDで知識や考え方をインプットし、学んだことを日々の業務の中で実践していく際にOJTで指導をする流れがスムーズです。
育成方法の中でOFF-JTに当たる研修が解決策として適切だと判断したら、研修の再設計にあたり、次の3つのことを明確にします。
・研修内容と研修方法
・実施タイミング
・変化を確認するタイミングと確認方法
研修内容と研修方法
研修内容と研修方法を明確にします。研修と言っても様々なコンテンツや実施方法があるためです。
例えば、マナーを改善する必要があるためマナー研修を実施しようと考えているとします。しかし、世の中には多くのマナー研修が存在しており、それらの内容は会社によって様々です。
「社会人としてこうあるべき」と一方的に教えるスタンスの研修もあれば、「社会人としてマナーが求められるのはなぜだろうか」と受講生に考えてもらいながらマナーの大切さを学ぶスタンスの研修もあります。他にも、今の時代にあった多様性やテレワークのマナーに触れているものもあれば触れていないものもあります。
研修の方法としても、個社で行うか公開講座で行うか、対面で行うかオンラインで行うかなど、様々な種類の中から自組織の課題を解決できそうなものを選択する必要があります。
研修内容と研修方法については、研修会社に話を聞いてみないとわからない点ではありますので、気になる研修会社に連絡して話を聞いてみたり、テキストを見せてもらったり、見学をしたりして、情報を収集しながら定めていきましょう。
実施タイミング
どのタイミングで育成を行うのが効果的かを考えます。特に研修などのOFF-JTは受講者が深く学べるタイミングで実施できると、変化を促しやすくなります。
効果を高めやすいタイミングとして具体的には、
・受講生が課題感を感じるタイミング
・これから研修で学ぶスキルが必要になるタイミング
・仕事に対してマンネリ感を感じやすいタイミング
などです。
これらのタイミングについては、「このタイミングで、この研修をやってほしかったということはあるか」「上司としていつまでにどんなスキルが欲しいかがあるか」など社員にヒアリングすると現場にあう、適切なタイミングがみえてきます。
不安や悩みが起きるタイミングで研修を実施できると、受講生の主体的に学ぼうとする姿勢を強められます。タイミングを意識してスケジュールを立てていただくことをおすすめします。
変化を確認するタイミングと確認方法
変化を確認するタイミングと確認方法も事前に決めておきましょう。そうすることで、再設計したやり方がうまく進んでいるのかを確認できます。
研修効果を確認するタイミングと方法については、「カークパトリックモデル」を活用することをおすすめします。
カークパトリックモデルは、研修やトレーニングの効果を評価するために広く使われているフレームワークです。1959年にアメリカのドナルド・カークパトリック博士によって開発されました。このモデルは、研修がどれだけ成果を上げているかを評価するために、4つのレベルに分けて評価するという方法を提示しています。
レベル | 確認内容 | 確認方法 | 確認タイミング |
---|---|---|---|
レベル1 反応(Reaction) | 受講者の研修に対する自己効力感を測定 | ・研修中の反応 ・研修後のアンケート | 研修中〜1週間程度 |
レベル2 学習(Learning) | 研修を通じて受講者がどれだけ知識やスキルを習得したかを測定 | ・テスト ・ケーススタディ | 研修直後〜1,2ヶ月程度 |
レベル3 | 研修後に受講者が実際に業務でどのように行動を変えたかを測定 | ・日報や週報 ・本人による自己評価(パルスサーベイなど) | 研修実施から3-6ヶ月後程度 |
レベル4 結果(Results) | 研修が組織全体にどのようなビジネス成果をもたらしたかを測定 | 売上やコスト削減、 顧客満足度などの数値 | 研修実施から半年以降 |
いつ、どのような方法で期待する変化を達成できているかを確認することも、再設計する時点で決めておきましょう。
④再設計した育成計画を上長や経営層に提案する
育成計画を見直した後、多くの場合は上長や経営者への提案や確認が必要になります。
せっかく思いを込めて作成した育成計画が、相手に理解されず却下されることがないように、見直しの背景などを踏まえながら、相手に理解してもらえる情報を用意する必要があります。
その中で、研修の提案・確認をする際に必要な基本的な要素としては、研修を実施が必要な背景や研修概要、必要な予算や人などのリソース、そして研修を見直すことで期待できる効果です。
研修を実施が必要な背景については、②の内容を提示すると理解してもらいやすいでしょう。研修概要やリソースは研修会社に確認を取ることで問題なく準備できるでしょう。
ただ、研修によって期待できる効果の説明は難易度が高いでしょう。現場の研究で言えることをお伝えします。
研修と成果の関係性については、直接的な効果があるとは言えませんが、間接的な効果は期待できる、という考えが現在では一般的です。
研修が企業の業績や成果への直接的な効果がないと言われているのは、次の3つの理由からです。
・効果の顕在化に時間がかかる
・外部要因が影響する
・要因の分離が難しい
研修を実施してすぐに成果に変化が出るということはないため、変化を見るために測定の時間が半年〜1年程度必要です。すると、その時間の中で、環境が変化したり、先輩や部下が変化したり、部署が変化したり、担当が変化したりなどさまざまなことが起きます。
そのすべての要因を取り除いて研修だけの効果を図ることは、現実的に難しい、というのが現状です。
研修が企業の業績や成果に直接的な効果を与えるとは言えませんが、研修によって社員の行動を変容させ、その結果、社員の行動が業績や成果に良い影響を与える、という間接的な効果はあると言えます。
Lim & Nowell(2014)が行った組織内での研修の成果移転(トレーニングトランスファー)に関する調査によると、研修による効果が成果につながるかを評価するのは複雑のため、行動で研修の効果を確認することを推奨しています。
また、クルックらのメタ分析では、人的資本(人に投資された内容)は、企業業績に直接影響を与えるというよりも、行動成果を上げることを通して、間接的に、企業業績に影響を与える、ということを明らかにしました。
つまり、研修で社員が企業に貢献するための行動を促すことで、最終的に企業の業績や成果にもつながるという関係になっています。
そのため、研修効果については次のように伝えましょう。
□□という期待する成果を得るためには、社員が〇〇という行動を取れるようにする必要があります。そこで社員に〇〇の行動を促すために、△△という研修を実施します。この研修を通して社員に対して〇〇の行動を促し、その結果、□□という成果につながることを期待できるようにします。
このように、研修を行うことで社員の行動を変えれるため、結果的に、成果にも変化を促すことを期待できる、という関係性を理解した上で提案しましょう。
⑤決まった育成計画を実施し、受講者の変化を観察する
設定した育成計画を実施する際は、関係する社員に対してなぜこのような研修を実施するのかという背景を丁寧に伝えることが重要です。
どんな社員になってほしいために研修を実施する、というような研修の目的を伝えたり、研修によって受講者の悩みや不安を解消できることをイメージできるように伝えると、研修への参加意欲が強まり、学びが深くなるため効果が出やすいです。
これらのメッセージはパワフルな言葉で伝えましょう。
そして研修が実施されたら、受講生の様子を④で決めたやり方で変化を確認し、研修を見直したことで研修効果が高まっているのか、調整が必要なのかを確認し続けます。
⑥必要に応じて調整する
研修を含めた育成計画は一度設計したら終了ではありません。④であらかじめ設定していたタイミングで変化を確認し、期待する効果を得られていない場合は、あらためて育成方法を見直したりやり方を変えるなどの調整をして、組織目標を達を達成できるようにします。
変化が見えないと失敗したという認知になってしまうことが多いですが、そこから次にどのように活かしていけるかを考えられると、成功につながる学びの機会になります。
落ち込んで終わりにせず、その機会を活かしてより良い研修にしていきましょう。
ここまでで紹介した6ステップをもとに進めることで、期待する研修効果を得られるような見直しを行えます。
2)研修は定期的に見直すことが必要
変化の激しい時代において、研修を効果的にするためには定期的な見直しが欠かせません。組織の目標や求められるスキルは、時代とともに大きく変わっていくためです。
例えば、従来のマナー研修では、電話対応やお辞儀などの対面でのコミュニケーションに重点を置いていました。しかし、現在では多様性を尊重したマナーや、オンラインでの振る舞いなど、新しい内容が求められています。
他にも、現在は個人で仕事を行えたり離職が当たり前になった時代になったため、以前と比べて社員のモチベーションやエンゲージメントを促す研修内容を取り入れないと、今までのままでは離職率が高まる、という状況になりやすいです。
つまり、時代の変化に対応して組織が成長するためには、研修も常にアップデートが必要なのです。
ただ、社内の視点だけで研修を見直すと、どうしても視野が狭くなり、必要な要素の見落としが発生したり、以前から続けている内容を必要と思い込んでしまい、時代にそぐわない部分が残ることも少なくありません。
そのような状態にならないために、外部の目を入れて客観的かつ広い視野で研修の現状を見直すことをおすすめします。
3)研修を見直したことで組織にポジティブな変化が起きた事例
事例1. パッケージ商品を導入したが現場で活かされず、既存の研修を見直し
業態:Webコンテンツ開発
従業員数:300名程度
研修受講対象層: 管理職候補
本企業は管理職候補のリーダーシップ開発を行うためパッケージ研修を導入しましたが、お勉強で終わってしまい、行動変容が何も起きませんでした。
「①現状とあるべき姿(ありたい姿)を明確にする」で紹介したニーズの階層構造で整理すると、下記の状況でした。
【事業ニーズ】
ありたい姿 | 管理職の層を厚くし、今の成長スピードに耐えられる状況を創る |
現状 | 管理職不足に悩まされている |
【パフォーマンスニーズ】
ありたい姿 | 当事者意識と主体性をもって、チームに貢献する |
現状 | 主体的にプロジェクトを進められず、基本受け身 |
【能力ニーズ】
ありたい姿 | チーム力を高めるファシリテーション力 |
現状 | 言われたことを愚直に行うためにのテクニカルスキル |
上記の差分を埋めるために、「個人の内的要因」の「スキル・知識」で○○を達成するアプローチすることとなりました。
・学術的な背景をふんだんに使ったリーダーシップ開発(パッケージ)
⇩
【見直し後】
現場で活用できるファシリテーションを学びながら、半年間のアクションラーニング
見直しによって、新たに導入された管理職候補研修
・経営陣とのチームビルディング
・ファシリテーション研修
・リフレクションセッション
・経営陣への成果報告会
研修を実施した結果、会議の整理が行われ、必要な人のみ会議に参加するようになりました。また、会議の質が変わったことで、参加者の発言数が変わり、各プロジェクトの成果が上がりました。
事例2. 組織の方針変更があり、既存の研修を見直し
業態:食品メーカー
従業員数:300名程度
研修受講対象層: 事業部長・マネージャー
本企業は、マーケティングコンサルティング会社を入れていましたが、マーケティングの各施策の効果が出ませんでした。次年度の戦略で、マーケティング戦略は外部に頼るのではなく、内製化で進めることになりました。
【事業ニーズ】
ありたい姿 | マーケティング機能を強化し、既存事業の成長だけではなく、新規事業開発にチャレンジする習慣がうまれる |
現状 | 昔ながらの営業活動で、既存事業の停滞、および新しいチャレンジは生れない |
【パフォーマンスニーズ】
ありたい姿 | 仕組みで儲ける方法を考え、移り変わる状況に適応する |
現状 | 足で稼ぐ営業スタイルと、他社の成功パターンを自社に取り入れるスタイル |
【能力ニーズ】
ありたい姿 | 困難な状況でも、適応し続けるリーダーシップを発揮する |
現状 | 言われたことを愚直に行う実行力 |
上記の差分を埋めるために、「個人の内的要因」の「スキル・知識」へアプローチすることとなりました。
マーケティングコンサルティング会社のトータルサービス
⇩
【見直し後】
現場で実施しているマーケティング活動を題材に、自身のリーダーシップと向き合う2年間のアクションラーニング
見直しによって、新たに導入された管理職候補研修
・学習する組織の勉強会(経営陣も参加)
・月1~2回のマーケティング会議(2~4時間)
研修を実施した結果、既存事業の復調(営業スタイルの変更)、および新製品が2製品開発されました。
事例3.新入社員のパフォーマンスを高めるために、研修内容を見直し
業態:美容品の器具の販売・エステサロン展開
従業員数:~300名
研修受講対象層:新入社員
本企業は関係性を重視した営業スタイルでの売り上げ創出に限界を感じていました。お客様の深いニーズを具体化し、提案していくスタイルに変えていきたいという想いが見えてきました。
「①現状とあるべき姿(ありたい姿)を明確にする」で紹介したニーズの階層構造で整理すると、下記の状況でした。
【事業ニーズ】
ありたい姿 | メンバーが顧客に対して、価値を提供している実感を持ちながら、顧客のありたい姿を具体化した提案によって、売上120%を目指す |
現状 | 売上の数字に追われることで、押し売りな状況が続き、離職率も高い |
【パフォーマンスニーズ】
ありたい姿 | お客様の課題を深掘り、課題の背景や潜在ニーズを整理しながら提案を行い、売上や満足度向上に繋げる |
現状 | 表層的なニーズを聞き、商品やサービスを販売 |
【能力ニーズ】
ありたい姿 | お客様の課題を深ぼる思考力、課題に合わせて提案できるコミュニケーション力 |
現状 | 愛嬌や関係性構築を重視したコミュニケーション力 |
上記の差分を埋めるために、「個人の内的要因」の「スキル・知識」へアプローチすることとなりました。
プレゼンス(見た目)の清潔さ、好感を重視した研修を実施
⇩
【見直し後】
お客様の要望を基に、潜在ニーズを深掘り、適切な提案に繋げられる課題解決のスキルを付与
具体的には、新入社員を対象とした公開講座にて、弊社のロジカルシンキング研修や問題解決力研修を導入いただくこととなりました。
4)まとめ|研修の見直しの相談はアーティエンスへ
研修の効果が感じられていないが、どうやって見直していいかわからない、というお悩みをお持ちの方に向けて、組織が期待する成果を生み出せるようにするための研修見直し方法について具体的にお伝えしました。
期待する研修効果を得るための見直し方法の流れは次の通りです。
①現状とあるべき姿(ありたい姿)を明確にする
②現状とのギャップを分析し、原因を突き止める
③ギャップの原因を解消する適切な改善策を選択し研修を再設計する
④再設計した育成計画を上長や経営層に提案する
⑤決まった育成計画を実施し、受講者の変化を観察する
⑥必要に応じて調整する
この流れで進めることで、研修をより効果的なものにしていけます。
ただ、組織の目標や求められるスキルは、時代とともに大きく変わっていくため、研修の見直しを1度実施して終わりにするのではなく定期的に見直し、常に効果を感じられる研修を実施できるようにしましょう。
なお、アーティエンスでは、研修を見直したいというお客様からのご相談を受け付けております。研修の効果を感じられないという現場についてお話をお伺いしながら一緒に課題を見つけ、より効果的な研修に向けたアドバイスをしております。
ぜひ一度無料相談フォームからお問い合わせください。
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