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なぜ社員にビジョンが響かない?中小企業のビジョン例と5つの育み方
更新日:
「ビジョン(経営理念)を創ってみたけれど、本当に意味があるの?」
「社内で掲げてはいるけど、社員が覚えていない…」
「日々の忙しさに追われて、理念なんて考える余裕がない」
こんな声を、多くの中小企業の経営者や人事の方から聞きます。
一方で、こんな調査結果もあります。
強力な経営理念を持つ企業は、持たない企業と比べて3年間で収益成長が約2倍。
(出典:「The Business Case for Purpose」/EY・ハーバードビジネスレビュー)明確な経営理念を持つ企業は、従業員エンゲージメントが平均で30%向上。
(出典:「Purpose-Driven Companies Evolve Faster」/デロイト)
これらのデータが示すとおり、ビジョン(経営理念)は「ただのきれいごと」ではなく、
業績を上げ、社員のエンゲージメントを高める力があります。
ビジョンは、立派な言葉を掲げれば良いわけではありません。大切なのは、「どう動くか」が明確になることで、日々の仕事や意思決定に、自然とビジョンが生きている状態です。
特に中小企業は、スピード感と実行力が求められるからこそ、行動や意思決定につながるビジョンが、組織の成長とエンゲージメント向上のカギになります。
本コラムでは、中小企業にとってのよいビジョン(経営理念)について、そしてビジョンが“絵に描いた餅”で終わらないための創り方と育み方をお伝えします。
ビジョンを育むことで、経営者だけが頑張るのではなく、みんなで未来をつくっていくチームをつくりましょう。
(注) 本コラムでは、「ビジョン=経営理念」という定義で説明します。

大学卒業後、大手通信会社、アルー(株)勤務後、2010年にアーティエンス(株)を設立。業界歴17年。大手企業から、中小企業、ベンチャー企業の人材開発・組織開発の支援を行っている。専門分野は、組織開発、ファシリテーション。
目次
1)中小企業は意思決定や行動につながるビジョンが重要
中小企業がビジョンを掲げるなら、「行動や意思決定につながるビジョン」を創ることが大切です。
どんなに立派なビジョンを掲げても、それが現場で実際に「どう動くか」に結びつかなければ、成果も成長も生まれないためです。
少ない人数でスピーディーに動かなければならない中小企業では、どんな行動を取ればよいのかが曖昧では、すぐに成果や成長にブレーキがかかってしまいます。
では、行動につながるビジョンとはどのようなものでしょうか?
それを理解するために、まずビジョンには大きく2つの種類があることを押さえておきましょう。
種類 | 内容 |
---|---|
信奉理論 | 哲学や価値観を表したもの |
使用理論 | 実際の意思決定や行動につながるもの |
信奉理論は、「クライアントファースト」や「社会貢献」など、理念や価値観を示すビジョンであり、解釈が人によって異なり、意思決定や行動に落とし込みにくい課題があります。
一方で、使用理論は「顧客満足を追求した新商品を創り続ける」といった具体的な行動までイメージできるビジョンで、社員一人ひとりの行動基準や判断軸となり、現場での具体的なアクションにつながります。
特に中小企業は、少ない人数で多くの意思決定を迅速に行わなければなりません。だからこそ、ビジョンと戦略・戦術・行動が一貫していることが、成長と生き残りのカギとなります。
そのためには、中小企業は理念や価値観だけにとどまらず、「具体的な行動や意思決定につながるビジョン(使用理論)」を掲げましょう。
「私たちは何を判断基準にして、どんな行動を取るべきか」 を明確にすることが、組織の一体感と行動力を高め、戦略の質と実行力が自然と備わります。
2)社員が迷わず動く!行動につながるビジョンの具体例
「行動につながるビジョン」をイメージしていただくために、具体的な例を用いて解説します。
例① ITコンサルティング企業
ビジョンの種類 | ビジョンの表現 |
---|---|
信奉理論 | テクノロジーで、顧客の可能性を無限に広げる |
使用理論 | 顧客のビジネス課題を深掘りし、最適なデジタルソリューションを継続的に提供する |
信奉理論の場合、企業の存在意義として共有されるものの、実際のプロジェクト選定や提案方針にどうつなげるかは、社員ごとに解釈が分かれる可能性があります。
一方、使用理論では「どのように課題を発見し、どう提案を行うのか」が具体的に示されているため、社員一人ひとりが迷わず行動でき、プロジェクト選定や日々の判断がビジョンに沿ったものになります。
例② 精密部品製造企業
ビジョンの種類 | ビジョンの表現 |
---|---|
信奉理論 | 細部へのこだわりが、未来の価値を創る |
使用理論 | 工程ごとの標準化と改善活動を徹底し、高い品質と安定供給を実現する |
信奉理論は、品質への誇りや意識を支える理念としては有効ですが、実際に「どの作業をどう行うべきか」という具体的な行動指針が不足しがちです。
使用理論であれば、「どの工程で何を確認し、どんな改善活動を行うか」が明確なため、現場の動きが揃い、品質と安定供給の実現につながります。
信奉理論は、理念や価値観を伝えるためには有効ですが、現場の行動まで落とし込むには工夫が必要です。
使用理論は、「具体的にどう動けばよいか」が明確なので、特に少人数で動く中小企業にとって、意思決定と行動を一致させる強い土台となります。
「どんな判断をするべきか」「どんな行動をするべきか」が明確だからこそ、組織の一体感や行動力、実行力が自然と備わり成果につながります。
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3)【中小企業向け】意思決定や行動につながるビジョンのつくり方
中小企業がビジョンをつくる方法は、大きく3つあります。
1. 代表が一人で創る
2. 経営幹部が作る
3. 社員全員で創る
それぞれの特徴をふまえ、自社の状況や文化に合う方法を選ぶことが、成功のポイントです。
3-1. 代表が一人で創る
代表が一人で創る方法は、スピード重視で、代表の強い想いをビジョンに反映できる方法です。トップがひとりで決めるため、意思決定が早く、方向性がブレにくいという特徴があります。
その反面、社員が「自分ごと」と感じにくく、受け身になりやすい傾向があります。
下記のようなネガティブな循環を生み出し、結果として、ビジョンが組織に根づくまでに時間がかかる場合もあります。
【代表が一人でビジョンを創った場合に起こりやすいネガティブなサイクル】
具体的な進め方は、以下のような方法があります。
・経営者とコンサルタントやコーチが一緒にビジョンを考える
・公開講座に参加して、自身でまとめる
・書籍などを参考に、一人で設計する
代表が一人で創る方法は、スピード感を重視し、経営者の想いをダイレクトに反映したい企業におすすめですが、その後の「育み方」にも意識を向けることが大切です。
3-2. 経営幹部が創る
経営幹部が創る方法は、幹部同士の連携が深まり、当事者意識を持ったビジョンづくりができる方法です。
複数の視点が入ることで、トップダウンとは違った広がりが生まれ、幹部間の一体感も高まるためです。
ただし、社員にビジョンが根づくまでに時間がかかる可能性があったり、現場の社員やお客様の声が反映されにくい場合があり、社員や顧客が共感しづらいビジョンになってしまうリスクもあります。
具体的な創り方としては、合宿研修などを行い、経営理念策定プロジェクトとして創っていくケースが多いです。早いものだと数週間、時間をかけるものは一年間程度のものもあります。
以下は、研修の中で経営幹部が創ったビジョンです。
この際は、アプリシエティブインクワイアリ(※)という手法を用いて、「経営者と次世代リーダー、および次世代リーダー同士の関係の質を高めること」と、「共有ビジョンの策定することで、自組織がどこに向かうかを明確にして幹部社員の意思を統一する」の2つにアプローチしていきました。
※アプリシエイティブ・インクワイアリー とは「組織の強みを肯定的な問いかけで発見し、可能性を広げるプロセス」です。
ビジョン策定の研修後には、ポジティブな変化が生まれました。
・部次長らによる合同合宿
・合宿後の、メンバーも巻き込んだボーリング大会
・部門間の活性化
・新サービスの企画立案の増加
より詳しい内容を知りたい方は、下記コラムをご覧ください。
3つの事例をご紹介【経営者向け研修】の2つの目的と5つの内容
経営幹部でビジョンを創る方法は、幹部間の結束を強め、リーダー層から組織を動かしたい企業におすすめです。その際は、現場の声をどう取り入れるかがポイントとなります。
3-3. 社員全員で創る
社員全員で創る方法は、最も社員のコミットメントが高まる方法であり、ビジョンづくりそのものが「育み」のプロセスになります。
つくる過程で社員一人ひとりが「自分ごと化」でき、ビジョンに対して主体的に動く土台ができるためです。
ただ、全員の想いを反映させるために時間がかかるケースが多いです。また適切なコンサルタントやファシリテーターがいない場合は、やらされ感になるケースもあります。
具体的な創り方としては、合宿研修などを行い、経営理念策定プロジェクトとして創っていくケースが多いです。数か月間から一年間程度のものもあります。
一般的な進め方は、次の通りです。
①プロジェクトを立ち上げ、メンバー選任
②プロジェクトチームで企画を検討
③プロジェクトチームが中心になって、全社員を巻き込みながら理念を策定
④できあがったものを全体でシェア
⑤プロジェクトチームの振り返りと今後のアクションを調整
プロジェクトメンバーは、可能な限り「自社の縮図」にすることがポイントです。
性別・年齢・国籍・役職・評価などのバランスを考え、一部のハイパフォーマーだけに偏らないようにしましょう。
また、多様なメンバーが集まる場では、ファシリテーターの存在が対話の質を高めます。
「社員全員で創る」がうまく機能すると、下記のように社員の行動が自然とビジョンに向かい、好循環が生まれます。
【社員全員でビジョンを創った場合に生まれる好循環のサイクル】
社員全員で創る方法は、時間はかかりますが、その分組織の一体感と実行力が高まる方法です。「ビジョンをつくる」と「育む」を同時に進めたい企業におすすめです。
3つの方法をお伝えしましたが、大切なのは、自社のフェーズ・文化に合った方法を選ぶことです。
また、どの方法を選んでも共通して言えるのは、ビジョンは「つくって終わり」ではなく、「育んでいく」ことで意味を持つということです。
次の章では、ビジョンをどう育んでいくか、その具体的な方法をお伝えします。
4)業績やエンゲージメントを高める!中小企業でのビジョンの育み方5選
ビジョンは「つくって終わり」ではありません。むしろ、どう育んでいくかで、その効果が決まります。
特に中小企業では、日々の仕事の中でビジョンを育む工夫が重要です。
ここでは、ビジョンを育むための5つの方法をご紹介します。
1.キックオフミーティングなどイベントで育む
2.会議で育む
3.目標設定で育む
4.オンボーディングで育む
5.研修・勉強会で育む
4-1. キックオフミーティングなどイベントで育む
キックオフミーティングなどのイベントを活用することで、普段の業務から少し離れて、ビジョンとしっかり向き合うことができます。
日常から離れた場で対話を行うと、思考の枠が広がり、ビジョンに対する理解が深まりやすいです。また、経営者と社員が立場を超えて対話することで、相互理解も進みます。
具体的な進め方は以下の通りです。
キックオフミーティングで経営者へインタビューを実施
↓
その内容をもとに、社員同士で対話
↓
経営者への質問タイムを設け、経営者と社員で探求
このプロセスを通じて、ビジョンが進化し、意味づけが変わっていくこともあります。
(写真)キックオフミーティングでの対話の様子
日常とは違う“非日常の場”だからこそ、ビジョンへの共感が生まれやすくなります。ビジョンを“特別な場”で見直したい企業におすすめです。
4-2. 会議で育む
日々の会議にビジョンの時間を取り入れることで、継続的にビジョンを育むことができます。
定期的にビジョンを意識することで、行動の判断軸になり、社員の意識が自然と高まっていきます。
例えば、以下のような取り入れ方があります。
・会議の冒頭で、ファシリテーターがビジョンを読み上げる
・ビジョンに沿った行動をしたメンバーへのポジティブフィードバックの時間を設ける
・プロジェクトの計画や振り返り時に、経営理念との接続を意識する
アーティエンスでは、週次のミーティングでは始めに必ずビジョンの確認から入ります。
またプロジェクトビジョンを創るときにも必ず経営理念のビジョンを入れます。
小さな積み重ねが、大きな行動変容につながります。毎日の会議をビジョンとつなげたい企業におすすめです。
4-3. 目標設定で育む
目標設定のプロセスにビジョンを組み込むことで、社員一人ひとりがビジョンと自分の仕事を結びつけることができます。
ビジョンが「遠いもの」「上の人が考えるもの」ではなく、「自分の目標」と自然につながることで、当事者意識が高まるためです。
具体的には、下記のように取り組む方法があります。
・目標設定シートの冒頭にビジョンや戦略を明記する
・チーム目標を決める際に、ビジョンとの関連性を確認する
アーティエンスでも下記のように、社員個人の目標設定シートのはじめに、会社のビジョンを記載しています。
ビジョンと目標が連動することで、ビジョンが“自分ごと”となり、自然と育まれていきます。
4-4. オンボーディングで育む
オンボーディング時にビジョンを対話することで、新入社員も既存社員も、ビジョンへの理解と共感を深められます。
新しい視点を持ったメンバーとの対話は、既存メンバーにとっても内省の機会になり、ビジョンへの向き合い方を見直すきっかけになるためです。
具体的なプロセスは以下の通りです。
新入社員など新たな入社メンバーが既存社員へインタビュー(組織への想い、仕事とのつながりを聞く)
↓
そのプロセスを通じて、既存メンバーは改めて内省しビジョンを言語化し直し、
新たな入社メンバーは、既存メンバーの想いを受け取った上でビジョンを言語化
アーティエンスでは新メンバーがインタビューしやすいように「相互インタビューシート」を活用しています。
当社の相互インタビューのシートを参考にしたい方はこちらからダウンロードしてください。
「教える・教わる」だけでなく、双方向の対話がビジョンを共に育む土台になります。新しく入ったメンバーと共に、ビジョンへの理解を深めたい企業におすすめです。
4-5. 研修・勉強会の対話で育む
研修や勉強会の中にビジョンとつながるワークを取り入れることで、ビジョンを学び、考える機会を創ることができます。
研修という普段の仕事から距離を置ける場で、ビジョンと自身の役割を重ねて考える時間を設けることで、当事者意識と主体性が育まれやすくなるためです。
以下が具体的な取り入れ方の例です。
より詳しい内容は、下記コラムをご確認ください。
若手社員研修で主体性の発揮を促す!成功に導く4つの秘訣
一皮むける!次世代リーダー育成研修│必ず成功させるために
学びの場だからこそできる深い対話を通じて、ビジョンを『知識』で終わらせず、日々の業務で実践できる『行動』へとつなげていけます。
ビジョンを育む際のNG行動
ビジョンを育む際のNG行動は、以下のようなことです。
・クレドカード・ポスターを作っただけで放置
・朝礼でビジョンを唱和するだけで終了
こうした形だけの取り組みは、むしろ信頼を失い、ビジョンへの拒否感を生み出すことにつながります。
「ただ作っただけ」「唱和するだけ」では、社員の心には届かず、むしろやらされ感を生み出します。
ビジョンは「共有するもの」ではなく、「共に育むもの」です。形だけの施策ではなく、日々の行動につながる工夫が必要です。
今回紹介した取り組みをすべて行う必要はありません。自社の文化やフェーズに合っていて、取り組みやすいことから始めることが大切です。
小さな一歩が、ビジョンを育む大きな力になります。
5)まとめ・中小企業のビジョン創りは、アーティエンスがおすすめ
本コラムでは、中小企業にとって良いビジョンとは何か?、どのようにビジョンを創り、育んでいくのか?についてお伝えしました。
ビジョンは、ただ掲げるだけでは意味がありません。
しっかりと創り、そして丁寧に育んでいくことで、業績向上やエンゲージメントの高まりにつながっていきます。
アーティエンスでは、経営者・幹部・社員それぞれが関わり合いながら、“一緒につくり、一緒に育てていく”ビジョンづくりを大切にしています。
すでにビジョンがある企業の場合は、「どう育んでいけばいいか?」を一緒に考えるお手伝いをしています。
それらを共に考えることで、次のような好循環が生まれています。
【社員全員でビジョンを創った場合に生まれる好循環のサイクル】
「ビジョンをつくったけれど、社員がピンときていない」
「経営理念はあるが、日々の行動につながっていない」
「これからビジョンを策定したいが、どう始めればいいかわからない」
そんなときは、ぜひ一度アーティエンスにご相談ください。
ご相談は無料です。より素晴らしいビジョンを育むためのヒントをお渡しいたします。
ビジョンは、経営者だけのものではありません。みんなで関わり合いながら「育んでいく」ものです。
部門や役職を超えて、同じ方向を向いて助け合えるチームをつくっていきましょう。
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