2023/5/25作成ー
「若手社員の育成を行いたい」
「新入社員や管理職の育成制度はあるが、若手社員はないので、用意したい」
「若手社員の離職が増えてきた。若手社員を大切にするためにも、若手社員の育成を考えたい」
若手社員の育成に関して、お調べになっていて、本コラムにたどりついたのではないでしょうか。
若手社員の育成は、さまざまな方法がありますが、新入社員育成や管理職育成と比較すると、どうしてもおざなりになります。 「若手社員の育成ってどうしたらいいのだろう?」と思っている方にぜひお読みいただきたいコラムです。
本記事を通して、若手社員の育成目的・方法・注意する点に関してお伝えいたします。本コラムを最後までお読みいただくと、若手育成に関してのテーマ設定や、若手社員の育成の実施などに関して、アイディアが生まれてくるでしょう。
目次
若手社員育成は、リーダーシップ開発を行うことで、2つの課題を解決できます。
具体的には、下記2点です。
それぞれ説明していきます。
(参考)リーダシップとは
リーダーシップの現在の主流の考え方は、「目的や目標、ビジョンに影響を与えること」と言われています。「引っ張る」や「決める」という考え方がリーダーシップだという認知が世の中にはありますが、「場を明るくする。和ます」や「アイディアを出す」なども影響を与えることになるため、これらもリーダーシップになります。
リーダーシップ開発によって、若手社員の離職率低下・モチベーションの向上につなげることが可能です。なぜなら、リーダシップは周りに与える影響力になるため、自身の存在価値の証明につながり、自己承認が上がります。
具体的には、影響力が高まれば、新しくチャレンジできる機会なども渡されて、より成長実感・予感を持つことができます。そして、評価も高くなるでしょう。
このようにリーダーシップ開発を行うことで、若手社員の職場での存在が大きくなり、そしてそのことで自組織へのエンゲージメントが上がったり、離職防止やモチベーション向上につながっていきます。なお、若手社員の離職に関して、さらに詳しく知りたい方は、下記コラムも参考にしてください。
リーダーシップ開発によって、若手社員の業務遂行力を向上することが可能です。
自身にあったリーダーシップ開発(パーソナリティベースリーダーシップ(※))を行うことで、若手社員の業務遂行力を高めていくことが可能になります。自身の強みを活かし、それがよい影響を周りに与えることで、さらに「よりよい影響を与えようと考えて、行動する」ようになります。その循環により、若手社員の業務遂行力が上がっていくのです。
例えば、知的好奇心が高く、勉強家の若手社員Aさんという人物がいたとします。勉強はするけど、なかなか実務に落とせず、業務遂行力が上がらないとします。この時に、彼が学んだことを、チームにシェアをして、それをみんなで現場につなげていくという勉強会を行ってもいいでしょう。そして、それはチーム力を高める体験にもなりますし、皆で学習したことを実験として現場で実践することで、若手社員Aさんの業務遂行力も上がっていくということです。
このように、リーダーシップ開発を積極的に取り組むことは、若手社員の業務遂行力の向上につながっていきます。
若手社員のリーダーシップ開発には、4つのアプローチがあります。
OJT(On-the-Job Training)は、若手社員のリーダーシップ開発において効果的なアプローチです。OJTを通じて、実践的な経験を積むことでリーダーシップを磨き、成長を促進することができます。
具体的には、上司や先輩社員から、フィードバックをこまめに多く行うといいでしょう。若手社員が、具体的にどのような素晴らしい影響を周りに与えたかを伝えていくといいでしょう。
フィードバックのポイントとしては、下記4点があります。
それぞれ詳しく説明していきます。
夫婦の離婚率予測で有名なジョン・ゴットマン博士(Dr. John Gottman)によると、「5:1」の割合で互いに関わることが、良好な夫婦関係の維持において非常に重要である、という研究結果を出しています。博士はこの研究結果を基に、リーダーシップやフィードバックの分野においても大きな影響を与えており、「5:1」の割合で日々のやり取りを意識することが重要だと言えるでしょう。
フィードバックの際には、「行動」を主語にすると改善すべき行動が明確に理解でき、フィードバックの効果は出やすくなり、成長にもつながります。一方で「あなた」を主語にしてフィードバックすると、受け手は「自分はダメなんだ。認められていないんだ」と自分自身までも否定するようになり、自己嫌悪に陥りやすくなります。気分が落ち込んでいる上に改善すべきポイントが不明瞭なため、成長もしづらくなります。
的を絞ったフィードバックは「これならできそう」と思えます。一方で、情報量が多いフィードバックは、受け手が理解するのに負担がかかり、次なる行動に繋がりにくくなります。また、フィードバックを高頻度で受け取り、短いスパンで改善行動を繰り返すことは、本人の前進感や成長実感につながります。「フィードバックは自分の成長につながる」と思えると、より好意的に受け止めるようになるでしょう。
具体的なタイミングとして、1on1等の時間を取ったフィードバックの機会に加えて、会議前後の時間・社内チャット等により、日々の業務の中で意識的にフィードバックの機会を増やす姿勢が大切です。ただし、やり方によっては「マイクロマネジメントをされている」と受け取られることもあるため、注意が必要です。
グロース・マインドセットとは、スタンフォード大学心理学教授キャロル・ドゥエック氏が提唱した考え方で、「自分が持っている能力や才能は、経験や努力によって成長できる」という信念・心の在り方を意味します。
グロース・マインドセットと対極にあるのが、フィックスト・マインドセットで「自分が持っている能力や才能は先天的なもので、経験や努力では成長しない」という信念・心の在り方を意味します。
効果的なフィードバックを行うにあたり、2つのマインドセットの違いを理解することは非常に重要です。グロース・マインドセットの傾向が強い人は「人は変われる」と信じ、フィードバックが自身の成長の糧になり、求めるべき存在であると認識しています。一方、フィックスト・マインドセットの傾向が強い人は、「人は変われない」と考え、フィードバックに対して恐怖感があり、避けるべき存在として認識しています。社員の成長を支援するための触媒としてフィードバックが作用するためには、それを提供する側も受け取る側も、グロース・マインドセットを持つ必要があります。 なお下記コラムですが、新入社員のコラムですが、フィードバックに関して、より知りたい方にはおすすめです。
SD(Self Development)は、若手社員のリーダーシップ開発において重要なアプローチです。自己啓発を通じて、若手社員は自己成長を促進し、リーダーシップを磨くことができます。
具体的な方法としては、下記3点を意識するといいでしょう。
それぞれ説明していきます。
若手社員の主体性を促す仕組みを創ることが重要です。この時に、無理やり学ばせるような環境を創るとやらされ感になってしまいます。主体性ではなく、受動的主体性(※)になってしまうでしょう。
そのため、精神的成長(当事者意識と主体性の発揮を解放)にアプローチするためのワークショップは組織が用意し、スキル・知識を学ぶ技術的成長を促すものはSDで行うとよいでしょう。
例えば、主体性と、受動的主体性の例としては、下記のような内容があります。
対象者 | 受動的主体性の状態 | 主体性を発揮している状態 |
---|---|---|
新入社員 若手社員 |
「テレアポは量をこなしなさい」と言われて、目標よりも多くのテレアポを行う | ・テレアポの量をこなすだけではなく、アポ数を上げるために工夫する ・別の方法を考えて、上司に相談をする |
中堅社員 | 「会議で自分の意見を伝えなさい」と言われ、多くの意見を伝える | ・会議の質が上がるように、事前に資料を用意する ・前提を見直す質問をする |
管理職 | さまざまな役割をアサインされ、愚直にこなしていく | ・重要度の高い役割を全うし、他の役割は部下に任せ、部下の成長機会にする ・ただ役割をこなすのではなく、経営者に問題提起をし、自身の役割自体を変更する |
多様な学習方法を用意して、若手社員の成長を支援することが重要です。選択肢があることで、若手社員の学習意欲を刺激することが可能です。
具体的には、書籍の購入、研修(任意)の受講、動画サービスの利用などの学習方法を用意するといいでしょう。
書籍の購入に関しては、福利厚生で月に上限を設けて、業務につながるものであれば、購入を自由に行ってもいいでしょう。また会社から、希望者に書籍を配布するという方法を取ってもいいでしょう。
下記は、新入社員向けの書籍として紹介していますが、若手社員にとっても学びになりますので、よければ参考にしてください。
研修に関しては、人事側がカフェテリアプラン(※)のようにラインナップを用意してもいいですし、若手社員自身が自身で見つけてきたものを受講する申請制度にしてもいいでしょう。
動画サービスなどは、動画見放題のサービスはとても増えていますので、組織として導入するのもいいでしょう。代表的なものは、「GLOBIS 学び放題」や「Schoo」などがあります。
チーム学習の場を設けることで、若手社員の自己啓発に対してのアプローチが強化されます。一人で学ぶよりも、仲間がいたほうが学習意欲が高まりますし、学習の学びの深さには限界があります。
OJTで、上司や先輩社員に聞くことも可能ですが、VUCAと言われる時代のため、上司や先輩社員でも分からないことがあります。その時に、チーム学習を通しての対話が有効です。
具体的には、下記方法が挙げられます。
それぞれ説明していきます。
人事が主導して、定期的に勉強会を創るということです。学習機会を創ることで、学ぶことが習慣化されます。ただし、若手社員の負担が起きないように、ランチと一緒にするなど工夫するといいでしょう。若手社員が最近学んだことを、共有してもらい、それをもとに対話をするだけでもいいでしょう。
若手社員自身が主導して、定期的に勉強会を創るということです。「人事主導の勉強会」と同様に学習機会を創ることで、学ぶことが習慣化されます。こちらも、若手社員の負担が起きないように、ランチと一緒にするなど工夫するといいでしょう。若手社員自身に企画してもらい、自身の仕事により直結する内容を扱うと、満足度は上がっていきます。
最も負担感がない方法として、朝礼などでの簡単な対話の場を設けるのも一つの方法です。それぞれが学んだことを、10分程度でシェアして、20分くらい対話してもいいでしょう。毎日が負担になる場合は、週に一度などでもいいでしょう。
OFF-JT(Off-the-Job Training)は、若手社員のリーダーシップ開発において効果的なアプローチです。OFF-JTを通じて、新たなスキルや知識を習得し、また研修という落ち着いた場だからこそ、内省が深くなり、気づき・発見も多くなります。
特に当社がおすすめするのは、精神的成長を促す研修や、自身の強みに目を向けるパーソナリティリーダーシップ開発を行う研修です。
技術的成長は、SDでアプローチすることでより効果が高まりますし、OFF-JTでも学ぶことが可能です。精神的成長を促すことも、パーソナリティリーダーシップ開発ももちろんSD・OJTで学ぶことは可能ですが、研修という場を通すことで、技術的成長よりも効果が高まります。なぜなら、深い内省を促すことが必要になるため、研修やワークショップといったOFF-JTを行う方がそのような場を創ることが容易になるためです。
なお下記に参考として、精神的成長にも技術的成長にもアプローチした若手社員研修に関してのコラムをご紹介します。
ご覧いただき、ご自身の組織にあった内容を取り入れていただくとよいでしょう。
OCTは、若手社員のリーダーシップ開発において有益なアプローチです。新しいチャレンジの機会を通じて、自身のリーダーシップを発揮することで、学び成長していきます。
具体的には、新しいプロジェクトへのアサインなどの新しい業務を任せるなどを行うといいでしょう。 下記2点に注意するといいでしょう。
それぞれ説明していきます。
上司や人事の支援やアドバイスが強すぎると、若手社員がリーダーシップを発揮する場面が少なくなります。そのため、アウトプットの定義(要件定義)等を明確にしたら、若手社員自身に任せきるということを意識するといいでしょう。
ただ任せきることに関して、心配が多い場合は、定例ミーティングを設けることで、状況を把握することが可能です。人事や上司が監督責任を遂行することも可能になります。そして、若手社員に関しては、結果責任・遂行責任・説明責任の3つの責任があることを、事前に説明しておくことも必要です。
失敗をすることが悪いとなってしまうと、人はブレーキを踏み、最低限のことしかしません。そのため、よい失敗と悪い失敗を事前に伝えることが重要です。
ハーバードビジネススクールの教授であるエイミー・C・エドモンドソン氏は「チームが機能するとはどういうことか」の中で、失敗の種類に言及していますので、下記内容を参考にするといいでしょう。
ここで言う「新しいチャレンジ」とは、トレーナーや上司が「すでに知っている」ことや「持っている答え」を実行させることではなく、まだ明確な答えのない領域に向けて行動することを指します。
そこで得られる経験は、若手社員の貴重な経験になるだけでなく、組織・チームにとっての新たな知見にも繋がっていくことでしょう。そして、それは若手社員の大きな「やりがい」「意義」にも発展されやすくなります。
若手社員のリーダーシップ開発を育成するためには、下記点はNGになります。
それぞれ説明していきます。
マイクロマネジメントは避けるべきです。マイクロマネジメントは、若手社員の成長と自己責任の発展を阻害し、インサイドアウトを止めてしまいます。受動的主体性だけではなく、受け身になる可能性があります。
ネガティブフィードバックが多いと、どうしても畏縮したり、その時だけ頑張るという状況になります。これは、インサイドアウトではなく、アウトサイドインになってしまいます。
※ 当社、サービス資料より一部抜粋
リーダーシップは、影響を与えるものになるため、他者(他の社員、お客様、外部パートナー)との関わりを通して、育成されていきます。ポジティブな影響を与えると、基本ポジティブな影響が返ってきやすいです。そのため、お互い良い影響が生まれやすくするためにも、相互作用が起きる環境が必要になります。
本コラムでは、若手社員の育成に関して、お伝えしました。
下記3点をお伝えしました。
①離職防止・モチベーション向上
②業務遂行力の向上
①OJT(On-the-Job Training)で若手社員のリーダーシップを開発を行う
②SD(Self Development)で若手社員のリーダーシップを開発を行う
③OFF-JTで若手社員のリーダーシップを開発を行う
④OCTで若手社員のリーダーシップを開発を行う
若手社員の育成を、リーダーシップ開発という文脈で行うことで、自組織に対してポジティブな影響を与えていきます。 本コラムを通して、若手育成に関してのテーマ設定や、若手社員の育成の実施などに関して、アイディアが生まれてきたのではないでしょうか。
若手社員のリーダーシップ開発は、組織にとてもポジティブな影響を与えますので、ぜひ本コラムを通して、自組織で何ができるかを考えていただければと思います。若手社員育成でご相談があれば、ぜひ当社アーティエンスまでご連絡ください。