2023/3/16作成ー
アーティエンスでは新入社員のセルフマネジメント力・リーダーシップの発揮を目的とした、振り返りツール【Growth 】をご提供しています。
本記事では、2022年度新入社員を対象とした月に一度の振り返りツール【Growth】の2月22日〜3月6日の回答の結果(n=46/企業数11)を、回答結果とともに読み解きます。
目次
今回のGrowth回答結果を見ていきましょう。全体の平均数値と標準偏差は次のようになりました。
※ 9つの設問に対して5段階(“とてもそう思う”=5, “そう思う”=4,“どちらともいえない”=3, “あまりそう思わない”=2, “そう思わない”=1)で回答
※ 標準偏差とは:データのばらつき具合を示す数値のひとつで、数値が大きいほどばらつきが大きい
9つの設問の中で平均値が最も高かったのは業務遂行力に関するQ1、最も低かったのはリーダーシップ発揮に関するQ9でした。
回答のバラつきを示す標準偏差が最も大きく出ていたのは、成長実感に関するQ6という結果になりました。
今回は、平均値が2番目に低い「Q8:私は自分なりの意見をもって仕事に取り組んでいる」に注目します。「自分なりの意見を持って行動(発信)すること」の実感が持てている新入社員・そうでない新入社員のフリーコメントを一部抜粋します。
・自分なりの意見をもって仕事に取り組めていると感じた。自分自身がよいと思ったことも行動に起こせるようになってきた。
・人に言われるがままではなく、自分から「これどうなってますか」などの働きかけが以前よりできるようになってきた点は誇れるかと思う。
・出社して作業を行うことが増えていきたので、質問や意見を上司に直接言えるようになってきた。このようなコミュニケーションをこれからも行えるように意識していきたい。
・新しいラインにもだいぶ慣れてきて、最初とはまた違う視点で自分なりにより良くなるように動くことが出来てると思う。ただ自分の一存で効率化を図ってしまっているので、視野を広げて周りの意見も取り入れて補完していきたい。
・未だに自分の仕事で手一杯になっていて周囲が見えていない
・先輩に頼ってしまうことが多く申し訳なく思う
現在新入社員の方々は、4月から入社2年目となります。
2年目社員は求められるスキルや期待される役割が、新入社員とは異なってきます。新入社員のうちは、ある程度指示通りに業務をこなしていれば良かった一方で、2年目になるとより率先して業務に取り組み、プラスαの提案や改善行動も求められてきます。
つまり、前述の「自分なりの意見を持って行動(発信)していくこと」がより一層期待される存在となっていきます。
自分なりの意見を持って行動(発信)していくことが期待される一方で、実際の職場では、
・新入社員が自分の意見を全く言ってこない
・言われたことはやるけど、自分からの働きかけが少ない
といったお悩みをよくお聞きします。その背景には、新入社員側に次の5つ壁が生じているからであると考えています。自社の新入社員の様子を思い浮かべながら、考えてみていただければと思います。
新入社員は先輩・上司に比べて、知識や経験値も圧倒的に少なく、自分の意見に自信が持てないことが多いはず。自分の意見が否定されたり、失敗することへの恐れも周囲より大きいかもしれません。
SNS世代とも呼ばれる新入社員。複数のSNSアカウントを保持しているように、職場とプライベートでキャラクターを使い分けている方も多いかもしれません。また、SNS活用から自身の発言に対する周囲の反応に過敏なため、職場ではできる限り波風立てずに過ごしたいと考えていることも。
わからないことは検索すれば、すぐに見つかる・誰かが教えてくれる・正解は自分の外側にある、という意識が強い世代。また、SNS浸透により「共感が多い≒正解」のような感覚を持っており、共感を得られるかわからない状況下での意見発信することへの恐れも。
テレワークやソーシャルディスタンスにより、社内の雑談機会の減少。それに伴い、自身のちょっとした意見や考えを周囲に伝えるタイミングをなかなか持てず、意見発信する⇒受け入れられる、という小さな体験の積み重ねが激減している。
「仕事を自分事として捉えられてない」「受け身姿勢が強く、言われたことをやればよいと考えている」「自分の軸で物事を考えられない」など、さまざまな要因が考えられます。
前述では、新入社員側に生じている5つの壁についてお伝えしましたが、新入社員側だけの問題ではありません。「新入社員が意見を持って行動(発信)できない」状況は、組織・育成側の下記4つの要因から創られてしまっている場合もあります。
新入社員への成長へ期待を込めた「もっと考えろ!」「全然ダメだ!」という“上司にとっての指摘”が、新入社員には、 “叱咤・叱責”と感じ、本当の意味で“正しく”フィードバックが伝わっていない。
上司の中で既に答えが決まっており、実際は新入社員の意見は聴いてもいない。そのため、新入社員としては、上司と異なる自分の意見を伝えて否定されるよりも、上司が持っている答えを探して伝えた方が居心地が良いため、他人依存な仕事の進め方が習慣化される。
「失敗は悪」と失敗した人を責め、挑戦する人が損をする組織風土が根付いている。「言ったもん負け」になるので、意見発信に後ろ向きになっている。また、ビジネス環境の変化により、お客様の失敗に対する捉え方も変わり、「お客様に失敗を怒られながらも、成長していく」という経験を得にくい。
新入社員からの意見発信を求めると口では言っていても、本心では、かれらの意見を前向きに捉えていない、その意見によって生じうる変化を恐れている。
・上司からの発言例:
「自分だけじゃ判断できないから、上に聞いてみるね(実際には聞かない)」
「良いアイディアだけれど、今は、これまで通りでやっといて」
前章でお伝えした、新入社員側・組織・育成側の壁を乗り越えて、新入社員の自分なりの意見発信や行動を促すための4つの取り組みをご紹介します。
一つ目は、「自分の意見を持つこと」の必要性を、改めて認識してもらうことです。
なぜなら、新入社員は「上司・先輩から言われたことをやっていれば、特に自分の意見を持つ必要はない」と考えている場合があるためです。ビジネスパーソンとして、「決められたこと・言われたことをやる」のは当たり前であり、それに加え、自分で考えて行動していくことが求められます。
具体的には、新入社員へ「なぜ、自分の意見を持つことが大切なのか?」「自分の意見を持たないまま仕事を続けるとどうなるのか?」と問いかけ、一緒に考える機会を設けても良いかと思います。また、自分の意見を持つための訓練として、「なんとなく感じたこと」であっても、その根拠や理由を考えて、言語化する癖付けを日常的に行っていくこと、新入社員へ問いかけていくこともおすすめです。
二つ目は、上司・先輩から新入社員へ相談したり、あえて弱みを見せていくことです。
新入社員より知識や経験が豊富な上司・先輩に対して意見を伝えることに、不安や恐れがあるのは当然です。そのため、上司・先輩の方から、新入社員へ相談をする機会を増やしたり、「自分たちでも知らないことはある」という一種の弱みを見せていくことが大切です。
実際、上司・先輩から新入社員への報告や連絡はあっても、新入社員へ相談することはほとんどない方が多いのではないでしょうか?しかし、新入社員からすると、上司・先輩から相談を受けたり、何か頼りにされることは嬉しく、役に立ちたいと感じるものです。
その他にも、例えば弊社では、上司の日報を新入社員を含むチームメンバー全員に配信しています。日報には、上司が日々の業務でどんな悩みや困りごとを抱えているのかが記載されており、それらをチームで共有し合うことで、お互いに助け合う仕組みをつくっています。
三つ目は、自身の意見を発信することが、新入社員本人にとってもメリットがあるのだ、と認識してもらうことです。
例えば、新入社員へ普段行っている声掛けを、次のようにひと言加えていただくだけでも、新入社員に変化があるかもしれません。
◆「会議では積極的に発言してね」⇒「○○さん、いつも最新トレンドへのアンテナがすごいよね。今○○さんが担当中の案件も企画しやすくなると思うから、会議では積極的に発言してくれると嬉しいな」
四つ目は、新入社員が意見を持って行動(発信)してくれた際は、感謝を伝え続けることです。
その際は、具体的にどんな点で感謝しているのか、詳しく伝えることがポイントです。
前述した4つを意識的に繰り返し、新入社員が「自分なりの意見を発信し、行動しても大丈夫」という認知を促していくことが大切です。
今回は、新入社員のGrowthコメントを基に、新入社員が自分なりの意見を持って行動(発信)していくための取り組みについてお伝えさせていただきました。ご参考になれば幸いです。
一人ひとり置かれている状況は異なりますので、Growth結果をひとつの枠組みとしながら、当人と対話しながら、今後のフォローをご検討いただければと思います。
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また、弊社では、若手・新入社員育成に取り組まれている人事担当者様や育成担当者様を対象に、参加型オンライン勉強会【Growth Meeting】を月1回、定期開催しています。どなたでも無料でご参加頂けますので、ぜひお気軽にご参加ください。
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