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~岩本絢太郎の日常~【7章 仕事の本質】

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コラム :ある新入社員の成長記録


【7章 仕事の本質】

インターン生のトラブルから早1ヶ月以上経ち、日常は何事もなかったように過ぎていく。

僕は右も左もわからない人事の仕事に日々戸惑いながら、
来たタスクというボールを打ち返すのが精いっぱいだった。
最初にトレーナーとしてお世話になった本多さんによく言われたっけ…

「仕事ができるようになりたければ、些細なことでは動じない耐性をつけろ」

うまくできなくて落ち込んだり、自信を無くしたりするけど、
それを超えてパフォーマンスを出すには、確かに気持ち的な耐性が必要だとしみじみ思う…

「岩本くん、10時からのミーティング資料、メールで送っておいたから事前に目を通しておいてね」

人事部で僕のトレーナーをしてくれている唐木田さんに声を掛けられた。

「あ、はい」

って、あと10分しかないじゃん!僕は慌ててメールの添付資料を開いた。
それは、人事部が主催する学生を囲い込むためのイベントに関する資料だった。
TTSの業務に関するゲーム形式の業務シミュレーションを、
学生向けに行って、TTSに興味をもってもらおうという趣旨のイベント。

ん?
資料の後半にあった一文に目が留まった。

『社内調整担当 岩本』

社内調整?何それ?何となく嫌な予感がする…

TTSではミーティングにできるだけ時間をかけない方針がある。
ミーティングといってもいくつかのカテゴリーに分かれていて、
短時間で集中して目的を達成することが求められる。

例えば…アイディア出し、プランニング、合意形成など、
何をするミーティングなのかを明確にして実施するのが決まり。

連絡や報告は事前に済ませておく、といこと。
特に人事部はそういった社内文化をつくる役割を求められているので、厳密に実施される。
今回のミーティングは…合意形成!
って、ことは…僕は調整役としてアサインされるってことだ!できるかな…

「岩本くん、いくよ!」

唐木田さんから声がかかる。

「あ、はい!」

僕は慌てて、立ち上がった。

「…といわけで、少しチャレンジングかもしれませんが、岩本くんに社内調整をお願いしたいと思っています。
私も適宜フォローします。みなさんのご意見はいかがですか?」

「賛成」

「意義なし」

唐木田さんの問かけに、部内メンバーが声を上げる。

「じゃ、岩本くん、一緒にがんばろ」

「…はい」

期待されるのはうれしいけど、できるかなぁ…僕はすでに不安でいっぱいだ。
TTSのように業務効率やスピード対応が求められるベンチャー企業は、全員が常にめちゃくちゃ忙しい。
会社の取り組みだからと言って、みんなが簡単に協力してくれるわけではない。
実際、本多さんなんてしょっちゅう断ってたもんなぁ…
僕は、そんなことを思い出しながら、気が重くなっていった。

その日の午後には、さっそくイベントに参画してほしいメンバーの選定が始まった。
社長や人事担当役員の藤沢GMはすでに調整済み。あと人事の企画側メンバーを除き、依頼対象者は全部で6名。

僕には協力してくれそうだという理由で、本多さんが選ばれた。

さらに以前に僕の相談にのってくれたマーケティング担当の中川さんは
ワーキングマザー代表として昨年に引き続き。

プロパーの先輩社員としては4年目の土田さん。人事部だから土田さんは無条件に参画決定。
あと新入社員2名については同期ということで僕に選定を任された。ここまではいいんだけど…

問題は、セールスプロセスマネジメント部(以下SPM部)の堀江さん。
この人はSPM部の立ち上げからやっていて、正真正銘のエース。
社長も堀江さんの提案はほぼNoとは言わないと言われているくらいの人だ。
おまけに、先月お子さんが生まれて、プライベートも忙しそう。

「肝は堀江だな」

佐々木マネージャーが一言。

「ですよねぇ」

唐木田さんもしみじみと 二人揃って僕を見る。

「…ですよねぇ」

僕にはそれしか言えない。

「堀江が難しいことは重々わかっているんだけど、この前のテレビはやっぱり影響は大きいんだよなぁ…
人事としては堀江メインでいけると、母集団の形成はすごい楽なんだよね」

そう、人事として何としてでも堀江さんにお願いしたいのは、『ミラクル発見』というテレビ番組が理由。
各業界でホットな人や企業を紹介する番組で、平日の遅い時間帯の番組だけど、視聴率は結構いいらしい。
そこで30分間まるまるTTSの特集がされたのだ。織田社長への取材だったけど、
「新進気鋭の若手社長を支えるエース」として紹介されたのが堀江さんだった。

やっぱり反響はすごかった。なんせ、学生インターンの応募が昨年の4倍。
志望動機は社長より堀江さんの名前のほうが多く上がったくらいだ。

「社長はちょっと遠い存在だけど、右腕なら自分たちにも可能性があるもんね。
石橋叩いて渡りたい最近の学生らしい感覚だよね」

というのが、唐木田さんの見解。でも、学生が堀江さんに憧れるのは分かる。

堀江さんは、一見はちょっとおしゃれな学者みたいな風貌で、
ギラギラしていない(ここが、本多さんとの違い…)
話しても穏やかな人柄が伝わる(これも本多さんとの違い)
それでいてものすごくロジカルでアイディアも豊富(これも……って失礼だぞ、おい!)

「俺もバックアップするからさ、岩本、頼むよ!」

佐々木マネージャーが発破をかける。

「はい!」

って、返事くらいは誰でもできるよね…

「じゃ、まず、オファーメールから作成しよっか」

唐木田さんの声は僕を励ますように、いつも以上に明るいものだった。

そのミーテイングから2日後…

堀江さんのアサインは暗礁に乗り上げていた。というより、一旦Noという回答をもらってしまっていた。
他のメンバーは、本多さんを除いて全員がOK。
本多さんはNGなのではなく、そのタイミングで海外出張が入る可能性があるということで、
現在調整中。でもたぶん大丈夫だろうって。

「岩本なら仕方ねぇなぁ」

本多さんの一言がうれしかったし、佐々木マネージャーからも褒められた。

が…堀江さんについては、なんだか厄介なことになってしまった…
というのも、僕のコミュニケーションにちょっと問題があったから。

オファーメールは、本人とその上長に送られる。堀江さんはマネージャーだから、部長が上長になる。
本来なら、オファーメールの後に上長とコミュニケーションしてから、
本人と話しをするというプロセスが必要なんだけど、僕はそのルールを破ってしまったのだ。

だから、僕はいま、あがいている。何としても堀江さんをアサインしたかった。

さかのぼること2日前。

オファーメールを送った直後、近くのコンビニに行くと、なんとそこに堀江さんがいた。
新人で調整力を持たない僕は、思いがけない遭遇に、神様がチャンスをくれたんじゃないかと思った。

「ほ、堀江さん!」

僕はコンビニを出ようとする堀江さんに、思い切って声を掛けた。

「あ、あの人事部の岩本です!」

「おお、おつかれさん」

ちょっと戸惑った感じだったけど、感じよく応えてくれた。

「あ、あのオファーメール読んでいただけましたか?」

「ああ、なんか来てたね。ごめん、まだちゃんと読めてないんだよね」

「あ、いえ、全然大丈夫です」

エースの堀江さんと初めてちゃんとコミュニケーションできたことで、
舞い上がってしまったのもあったと思う。
僕はしどろもどろになりながらも、懸命にイベントに参画してほしいことを訴えた。
堀江さんは涼しい顔でうん、うん、と聞いてくれた。

「そっか、僕の一存では決められないけど、君の情熱は良くわかったし、できるだけのことはしたいと思うよ」

別れ際、堀江さんの一言に、僕は有頂天になった。

「はい!よろしくお願いします!!!」

デスクに戻った僕は、外出している唐木田さんと佐々木マネージャーが早く帰社しないかそわそわしていた。
堀江さんの一言を早く伝えたかった。
一時間ほどして帰社した二人の元に、僕は喜び勇んで駆け寄った。

「あの、堀江さんの件でご報告が」

ちらりと僕を一瞥した佐々木マネージャーが、思いがけない言葉を言った。

「うん、俺もその件で岩本に話がある」

???

「ちょっと会議室押さえますね」

唐木田さんの声が心なしか、冷たい。
なんだろ???

会議室で佐々木マネージャーと、唐木田さんとテーブルを囲んだ僕は、
さっきの有頂天はどこへやら…僕は何かをやらしたことを悟っていた。

「さて、まずは岩本の報告から聞こうかな」

佐々木マネージャーが第一声を発した。僕は、コンビニでの出来事を説明した。
二人は黙って、時折うなずきながら話を聴いていた。

「それだな」

話終わった直後、佐々木マネージャーが納得顔でうなずいた。唐木田さんも同じく。

「ど、どういうことでしょうか?」

僕は恐る恐る聞いた。

「やっぱさぁ…レポートラインは無視しちゃだめだよ」

佐々木マネージャーが諭すように僕に投げかけた。
レポートライン?

「いきなり堀江本人に言ったのはマズかったな」

「そうなんですか…?」

「そう、会社にはレポートラインっていうのがあって、この件はまず部長に言って、
許可をもらってから本人へ、というのが筋なんだよ」

「・・・」

「今回は、いきなり堀江に言っただろ?それが山下部長に伝わって、
俺の携帯に連絡がきたの。レポートライン無視して勝手に進めるなって」

「・・・」

「岩本に悪気がないのは分かってるからさ、今回はちょっと勢い勇んでってことで収めたけど、
山下部長は製造の出身だからさ、そういうのは結構厳しいんだよ」

「・・・」

「とりあえず、改めて山下部長と話して、堀江のアサインを打診しよう。それは俺も行くからさ」

「はい・・・」

「何かいいたいことがあるんじゃない?」

唐木田さんが気遣わし気に声を掛けてくれた。僕は久々に頭に血が昇っているいくのを感じていた。

無視した?
勝手に進めた?
僕はそんなことはしていない・・・
でも、うまく声にならない。
主張したいことはあったけど、うまく伝えられる自信がなかった。

「・・・いえ、すみませんでした」

その日の夕方、同じ会議室で、山下部長を交えての話し合いがなされていた。

「と、いうわけで、改めて堀江のアサインをお願いしたいです」

佐々木マネージャーが今回の趣旨と、僕のフライングを詫びたうえで、改めてお願いしてくれた。
僕も本心は色々あったけど、堀江さんに参画してほしかったので、とりあえず謝罪をした。

「うん、とりあえず、趣旨は分かったので、本人の意志も交えて判断したい。
一旦預からせてもらうよ」

50歳になる山下部長はTTSではかなりのベテランで、そのぶん威厳もある。

「よろしくお願いします」

三人揃って頭を下げて見送った。

2日後、つまり今日、堀江さんの件で回答がきた。
答えは…No。

「マジかぁ…」

唐木田さんが思わずつぶやいた。

「なんでですか?」

思わず、僕は熱くなった。佐々木マネージャーが言葉を選びながら説明してくれた。

「仕事やプライベートが忙しいのもあるけど、それ以上にやっぱり頻繁に他部署の依頼をOKしちゃうと、
さらに他の部署の依頼も立て続くのを懸念してるんだろうな。
堀江は社内一のエースだからな、他部署も協力をお願いしたいことは山ほどあるでしょうよ。
そうなるのを避けたいっていうのもあるんだろうな。この前のテレビは広報からの依頼だけど、
実はかなり拘束時間が長くて、本人の負担も大きかったみたいなんだよな」

「堀江さんは何ておっしゃっているんですか?」

「さあ、わからん」

佐々木マネージャーは素っ気なかった。

「そっかぁ、どうしよっかなぁ」

唐木田さんは、すでに気持ちを切り替えているみたいだった。

でも、でも…僕は納得がいかなかった。
だって、本人は「できるだけのことはする」って言ってくれたのに!
しかも、断るなら何でレポートラインがどうのこうのって言うんだよ、
もったいつけないでとっとと断ったらよかったじゃん!

僕は、完全にムカついていた。

「ま、納得いかないのは分かるけど、仕方ないよ。それぞれの部署の事情もあるし、
こっちが協力できないこともあるんだから」

唐木田さんが、僕をなだめるように声を掛けてくれた。

「そ、岩本の熱意は見直したよ、ここは切り替えていこう」

佐々木マネージャーも僕を気遣ってくれた。
でも、僕はやっぱり納得がいかなかった。

「何とかしたい!」

僕にしては珍しく燃えていた。
でも、どうしたらいいかは分からなかった。
あと、勝手なことをしてこれ以上迷惑を掛けるのは嫌だった。

どうしたらいいんだろう…悶々とした状態で廊下を歩いていると、
向こうから、心のどこかで会いたいと思っていた人がやってきた。
中川さんだ!

「中川さんっ!!」

僕の声は思わず大きくなってしまった。

「お、いわもっち、また悩める青年か?」

中川さんは僕を見るとにっこりとして、いつもの声で応えてくれた。
僕は、中川さんに知恵を借りることにした。

僕はまだ、諦めていない…!

続く


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