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~岩本絢太郎の日常~【5章 トラブル】

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コラム :ある新入社員の成長記録


【5章 トラブル】

いつの間にか季節は秋になり、
朝夕はYシャツ1枚では涼しい日もあるくらい。

僕は相変わらず、イベントソリューション部(以下IS部)で、
複数の案件に追われる日々を送っていた。

そんな中でもすごく嬉しいことがあり、僕のモチベーションは高い。

8月下旬まで準備に追われたライマークライマーさんの社員旅行案件、
旅行先でのイベントを盛り上げるというミッションをもった案件が大成功に終わったのだ。

先方の意向で我々は準備段階までしか関われず、
あとは先方にお任せする形だったため、正直不安も大きかったけど、
かえってそれが良かったみたい。

「プロの黒子」

という最高の評価をいただき、この先、新規案件の見込みも出てきた。

「仕事のおもしろさが、わかってきたのかもな」
との、本多さんの言葉も嬉しい。

福原は相変わらずのテンションで、苦手というか、疲れるとういか、
そんな感じだけど、少なくとも過剰な反応をしなくなったかも・・・

そんな僕たちが今、全力投球で頑張っているのは、アーティエンス商事さまのイベント。
お取引先を招いての新商品の展示会をサポートするというもの。

本番は10月の初旬、いよいよ一週間後に迫っている。
今日は、会場となるイベントホールで本番を想定した、設営や進行に関する打合せ。

本多さん、福原、僕の3人は揃って、ホールに足を踏み入れた。

「こんにちは!お世話になります!」

3人揃って大きな声でご挨拶。
元気な挨拶はTTSのモットー、というより本多さんのモットーだから。

ホール前方を見ると、先方ご担当者の田原さんと来栖さんはすでにいらしていた。
田原さんは大企業の広報部課長というバリバリのキャリアウーマンで、
来栖さんはその部下。5年目だったかな、僕たち下っ端にも気遣いを忘れない優しい男性だ。

あと、作業姿を着た見知らぬ男性が2人いた。
我々の声に全員が振り向く。が、返事はない。

ん?なんだろう…ちょっといつもと雰囲気が違うような…

「本多さん…ちょっと至急いい?」

遠くから、本多さんを呼ぶ田原さんの声が心なしか固い。

「は、はい!」

本多さんの声も、緊張が感じられる。
なんだろう…何かあったぽい。

あ…!!

何があったかはすぐにわかった。
新商品を展示する什器(商品の展示用のデザイン棚)が数十個すでに搬入されていたが、
それがこの緊張の原因だ。

僕の記憶にあるもの、僕たちが業者さんに発注したはずのものと違う!!

「これって…?」

本多さんも動揺が隠せない。

「さっき、搬入してもらったんだけど、
こちらがお願いしたものと違うわよね?これ。何の間違い?」

これまでに見たことがないくらい、田原さんの表情が厳しい。
来栖さんも不安そうにこちらを見ている。

「すぐに確認させてください!」

本多さんの声が響く。
本多さんの視線が福原を捉えた。
福原の顔は血の気がなかった。

「福原、すぐにPCで発注履歴を確認してくれ」

「は、はい…」

「岩本、ここにある什器の写真を撮ってくれ。あと、それぞれの数も記録して」

「はい」

作業服の男性は搬入だけをやっているとのことで、
発注内容や経緯については一切わからないようだった。

来栖さんは本社に状況報告をしに行き、
田原さんと本多さんは厳しい表情で言葉を交わしていた。

間違えられた什器、何があったんだろう…

僕はいろいろな角度から写真を撮りながら、鼓動が激しくなっていた。
福原に目を向ける。
ノートPCの画面を凝視していた福原の表情は、完全に無表情で異様に白かった。
まるで見えない「最悪」の二文字が浮かんでいるようだった。

「福原…」

本多さんが声を掛ける。
福原は無言のまま、本多さんにPC画面を見せた。
本多さんの表情にも最悪の文字が刻まれているようだった。

「申し訳ございません!!!」

声が響いたと同時に、
本多さんの身体は90度を超えた状態に折り曲げられた。

「申し訳ございません…」

福原も従う。
もちろん、僕も。
二人の様子を見る限り、我々のミスだったことはもう疑いの余地はない。

「謝罪は後でいいわ。とにかく、対応を検討しましょう」

冷静な田原さんの声が頼もしくもあり、恐ろしくもあった。

・10:00、会場で発注ミスが発覚。
・12:00、什器を撤収、一旦お互いに帰社。
・15:30、アーティエンス商事さまへ謝罪。今後の対応について協議。
織田社長とIS部長の八木さん、本多さん、そして福原が伺った。
・16:00~19:30、なんとか什器を再手配すべく奔走。
・20:00、アーティエンス商事さまの広報部長、田原さん、来栖さんに、
什器デザインの一部変更を受諾いただくための協議。
・21:00、TTS社内会議。発注ミスの経緯が簡単に報告され、
今後のスケジュールや人員手配について協議された。
・23:30、IS部MTG。イベント前日の設営に協力していただくことなった。
(什器の搬入がギリギリになるので、設営時間が半分になってしまった!)
メンバーも含め、今後について依頼や打合せ。

間違えられた什器は、単純な発注ミスだったことが判明。

什器は全部で4種類、その色とデザインがあべこべにオーダーされてしまっていたのだ。
担当したのは福原。

メールオーダーの時点で間違えてことも問題だけど、
お客様に納品するものは電話でオーダー確認する決まりがあったのに、
福原はそれも怠ってしまっていたのだ。

午前1時、静まり返ったオフィスには、本多さんと福原と僕の三人が残された。

「す、み、ませ…ん、でした」

うなだれた福原の謝罪は涙声だった。
いつもはムカつく福原だけど、さすがに言葉が見つからなかった。
明日は我が身という危機感もある。

「いや…、俺も悪かったよ」

本多さんが思いがけない言葉を口にした。

「俺のタスクマネジメントには問題があったよ。八木さんにも言われた。
他のチームに回せばよかったのに、いろいろな案件を欲張ってしまって…
福原にも、負担をかけたよな。岩本も…悪かった」

「いえ、そんな…あれば自分のケアレスミス以外、何でもありません!」

福原が全力で自分の非を主張した。

什器の再発注は一応なんとかなったものの、安心できる状態とは言えない。。

わずか一週間で什器を生産してもらう必要があるため、
4種類の什器を3つの会社に分散して発注せざるを得ず、
中には以前、品質に問題があってしばらく利用していなかった業者さんもあった。

4種の什器の品質は大丈夫か、テイストや色のトーンがきちんと揃うのか…
三人とも、胃が痛い日が続きそうだ…

翌朝、眠い目をこすりながら、少し早めに出社した。
案の定、本多さんはすでに出社して、PCでガシガシと何かを作っていた。

でも、福原の姿は見えない。
そのうち、続々とメンバーが出社して、始業時間になった。

「おはようございます!ちょっと今日は緊急で連絡事項があるから、ちょっと集まってもらえるかな」

IS部長の八木さんが、IS部メンバーに声を掛けた。
すでに情報は回っているようで、みんな落ち着いている。
八木さんからトラブルの経緯や、本番まで部を上げて本多チームをサポートすることが伝えられた。
本番前日の夜に設営担当として、参加してくれるメンバーについても言及があった。
参加メンバーの名前が呼ばれる度に、本多さんが

「よろしくお願いいたします!」

と深々と頭を下げている姿が切なかった。僕も一緒に頭を下げるしかなかった。

てか、福原、あいつ姿が見えないけど、何やってんの???
寝坊?
出社拒否?
まさかね、でも今日はちゃんと来ないとダメだろ…

「岩本、今から打ち合せいいか?」

本多さんが声を掛けてきた。

「はい、あの…今日、福原は??」

「福原?もうすぐ来ると思うけどな」

「え?遅刻ですか?」

「ははは、まさか、ちげぇよ」

「あ、おはようございます」

ちょうど福原が来た。
書類やら、紙袋やら、何かやたら荷物が多い。

「どうだった?」

「はい、社長と直接お話しさせていただいて、
責任をもって対応することを約束してもらいました」

「そっか、じゃ、大丈夫そうだな」

「???」

「福原ね、請負業者さんのB社さんに行ってきたんだよ」

「B社さん?例の品質が心配な会社さん?」

「うん、直接説明して、きちんと対応いただくことを約束してもらったんだ」

福原、朝からそんなことしてたんだ…

「あ、前日の設営手伝っていただく方に、挨拶してきます」

「ああ、そうしとけ。俺は岩本とMTGしてるから」

なんだか、これまでにない感情が溢れてきてしまった。

僕は…この仲間のために何かできないかな…

「本多さん、MTG、ちょっとだけ待ってもらえません?」

そういうと、僕は福原の後を追った。

「申し訳ございません!よろしくお願いたします!」

福原と一緒に並んで、僕は思いっきり頭を下げてみた。
設営手伝っていただく方がちょっと引くくらいに…

仲間のために何かするって、けっこういいな。

つづく。


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