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~岩本絢太郎の日常~【3章 共有】

コラム :ある新入社員の成長記録


【3章 共有】

昨日、7月25日にイベントソリューション部(以下IS部)には、新たに福原と新卒メンバーがきた。竹内と平井はそれぞれ別の部署へと異動していった。
ちなみにIS部はお客様企業の社内イベントを代行する部署で、僕らのトレーナーは本多さん。アメフト部出身で、体と声の大きさはまさにイベント向き、といったところ。

「岩本、どう思う?」

本多さんに声を掛けられ、我に返る。
いま質問された…!
配属されてすぐのころの本多さんなら、新人の意見を聞くなんて考えられないことだったけど…本多さんも成長したんだなぁ(僕が言うのも変だけど)…
その理由は、1章と2章でご確認を。

「そうですねぇ…やは、」

「社内アンケート、やりましょうよ!!」

…え?思わず声の主を見る。福原だった。
福原の横顔には、なんだろう、揺るぎない自信みたいのものにあふれ、まっすぐに本多さんを見ていた。ていうか、いま、質問されたの、僕だよね…??

「クライマークライマーの社員さんに直接、やりたいことをアンケートで確認しちゃえばいいじゃないですか!」

「お、おう、そうだな、ま、そういうのもあるかも、な」

前のめりは福原に、本多さんもやや戸惑い気味。

今回、我々が担当するイベントは、「株式会社クライマークライマー」という、マーケティング企業の社員旅行。9月半ばにある70名という大所帯での旅行をいかに盛り上げるか?がミッションらしい。すでに旅行代理店が入って場所や宿泊先は決まっているものの、「何か印象深いイベントを」というオファーで、IS部に声がかかった。
今日はそのキックオフMTG。ただ当日までに時間がないから、メインイベントについては早急に考えなきゃ、という状態。

「ただねぇ、お客様企業の社員にアンケートするのは、そんな簡単じゃないのよねぇ」

今回、一緒にチームを組むことなった中川さんという先輩が、ゆったりとした口調で口を開いた。中川さんは6年前にTTSの前身企業に入社してから、ずっとマーケティングを担当してきた古株であり、その発言は社長にも影響を及ぼすという影の実力者だ。噂によると旦那さんはカナダ人で、すでにお子さんも二人いるらしい。

「え、なんでですかっ?何が難しいですかっ?」

福原が、これまた前のめりに中川さんへ投げかける。

「うーん…社内イベントの企画なんて、本当は社内でやってもいいもんでしょ?でも面倒だから、あえてお金をかけてアウトソーシングしているわけじゃない?それなのに、アンケ
ート云々って、けっこう面倒くさがられるのよねぇ」

うん、そうだよな。
藤沢GMも、「IS部のバリューは、お客様の面倒を引き取ること」って言ってたもんな。

「強制じゃなくて、僕らがメールで投げて、興味のある人だけ答えてもらえばいいじゃないですかっ!」

そんな、簡単な話なのかな…?

「うーん…それだと個人情報の問題があるからねぇ。全社員のメールアドレス教えてくださいって言うの?」

そりゃそうだよな。

「聞くだけ聞いてみてもいいじゃないですかっ?」

え?なにそれ?

「何言ってんだよ!常識を知らない会社だと思われたら終わりだろ!」

福原の的はずれな食いつきに、本多さんもちょっとイライラしてきたみたい…
僕も同意。

「岩本も、何か言えばっ?」

は?突然、福原が僕に振ってきた!ていうか、なんで、君が仕切るの?

「…アンケートは、ちょっと違うと思います!」

僕なりに強く断言してみた。

「じゃ、他のアイディアはっ?」

は?なんか、カチンときた。なんで福原にそんな風に言われなきゃいけないんだよ!

「だから!それをいま話合ってるんだ!」

ほ、本多さん、ナイス!

福原って…なんていうか…ちょっと、うっとおしいかも…

自分で言うのもなんだけど、僕は滅多なことでは怒らない。争いごととか、言い合いとかすごく苦手だし。そんな僕が、うっとおしいと思うことはかなり珍しい。
福原ってどんな奴なんだろう…?

昼休み、僕は福原が先週までいたセールスプロセスマネジメント部(以下SPM部)に足を向けた。
この部署は、お客様企業の営業に関するところを多面的に調査・分析をして、フィードバックしたり、教育提案をする部署。TTSが急成長を遂げた理由でもある部署。先週までIS部だった竹内が昨日から配属されていた。

僕に気づいた竹内は、軽く手を挙げると、少し離れたところにいた別の同期に声をかけた。西山さんだ…入社前から秘かにかわいいと思っていたんだ。あ、一緒にこっちに来る。

「おつかれ!」

「うん、おつかれ」

「ランチ、西山も一緒にいいでしょ?俺、福原のこと知らないからさ」

「う、うん、もちろん!ありがとう」

ラッキー!でも、声がデカいよ、竹内…

ビルの裏手にあるパスタ屋に入る。

「岩本が、福原について知りたいだんって」

空気を読まない竹内は(これが思いがけず功を奏することもあるんだけど)、唐突かつストレートに西山さんに切り出した。

「ああ、福原くんね…」

西山さんの声のトーンがあまりにも低くなってちょっと驚く。

「う、うん。あの今度ISで一緒になったんだけど、いきなり大きめのイベントを一緒にやるからさ、ちょっと知っておいたほうがやりやすいかなって…」

「ISなんだ、福原くん。トレーナー、本多さんでしょ?やっていけんのかなぁ?」

「え、福原ってそんな感じなの?」

竹内も福原のことはほとんど知らないらしい。

「すごいやる気はあるんだけど、やり方を間違えているというか、それこそ空気を読まないというか…わかりやすく言いと、かなり自分本位なんだよね」

そう、そうだと思う。僕は心の中でうなずく。

「配属されてすぐにね…」

西山さんが、福原に関するエピソードを幾つか披露してくれた。そのほとんどが、福原の強引な進め方や、周囲への配慮のなさに関するものだった。
話を聞いているうちに、僕はブルーになってきた。こんな同期と3カ月間も一緒にやるのか…しかも社員旅行案件ともなると、下手すりゃ一緒に泊まりとか??
えー…やだな、なんとかしたい。

「でね、個人的にはこういった福原くんに関すること、トレーナーの人はちゃんと聞いておいたほうが良くないかなぁって、思うんだよね。うちの会社って、人に関するネガティブ情報を伏せるというか、あんまり伝えないところがあるじゃない?」

「そうなの?」

「うん、去年転職してきたリーダーの人が言ってた。うちの会社は人に関するネガティブ情報を教えてくれないから、指導がしにくいって。ポジティブであることを必要以上に重んじる文化があるんだって」

「へぇ…」

僕と竹内の声が揃う。

そして、僕は思いついた。
福原について、本多さんに伝えよう!あと中川さんにも。だって午前中のMTG、明らかに二人とも福原について良く思ってないもんな。

昼休みも終わりに近づき、二人と別れた僕は、運よく、オフィスの隅で談笑している本多さんと中川さんを見つけた。Goodタイミング!

「あの…ちょっといいでしょうか?」

「お、岩本が珍しいな、どうした?」

「あの、福原くんのことなんですけど…」

「福原?」

僕と本多さんのやりとりに、中川さんも興味深く耳を傾けている。

僕は、西山さんに聞いたことを話した。
SPM部での福原に関する出来事について、周囲がどう思っているかについて。ネガティブ情報を共有しない文化について。できるだけ感情を込めずに。
一通り話し終わり、二人の様子を窺った。
・・・無言の時間が流れる。
・・・あれ?
思っていた反応と違う。
手を頭の後ろで組み、目を閉じて眉間にしわを寄せる本多さん。
僕を見つめる中川さん。でもその目はなんだか僕を憐れんでいるようだ。

「岩本」

低く、ちょっと威圧感のある本多さんの声。

「は、はい」

な、なに??僕は一気に緊張してきた。

「・・・福原がSPMでどう思われているかは分かった」

分った・・・? なんか、期待していた反応とは違うかも・・・

そして、一呼吸置いた本多さんの口からは、思ってもみなかったセリフが僕を打ちのめした。

「で、お前は何が言いたいんだ?」

「!?!?!?!?!?・・・え?」

脈拍が一気に上がるのを僕は感じた。
何が言いたい・・・??

しどろもどろに伝える。

「ぼ、ぼくは、ただ、あの、こういったことをトレーナーの方も、その、知っておいたほうがいいと言われて、あの、たしかにそうだなって思ったんで…」

「・・・・・・」

本多さんの無言が怖い。

「うん、わかったぁ。とりあえず、情報共有ってことだよね?」

中川さんが、朗らかな声で言ってくれた。

「あ、は、はい!あの、ほ、本当にそれだけです」

「了解。じゃあ、仕事に戻ろっか」

「あ、…はい」

手を頭の後ろで組んだままの本多さんは、無言のまま僕を見ていた。

つづく…


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